野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

Growling Tiger, Roaring Dragon

『風の万里 黎明の空』の下巻。

景王となった陽子と、祥瓊、鈴がついに合流し、悪代官をやっつける。あまりにも雑な説明だけど、ご勘弁を。とりあえず、あー面白かった、という感想だ。
それにしても、桓魋も夕暉も虎嘯も普通に変換で出てくるからびっくりするが、何のことはない桓魋という名前の人物は実在し、春秋時代の宋の人物で『史記』や『春秋左伝』に登場するようだ。そして夕暉というのは夕陽の光のこと。また虎嘯とは、虎が吠えること、なのだそうだ。さらに龍が鳴くのは龍吟、龍が鳴くと雲が生まれ、虎が吠えると風が生まれるということで、同じ類の者同士が互いに通じ、共鳴することを龍吟虎嘯、というのだと。うーむ知らんかったな、勉強になります。で、あれ?この字面どっかで見たことが… と思ったらアレですよ、WOWOWでやってる中国歴史ドラマ『三国志』の第2部(全44話!)のサブタイトルが『虎嘯龍吟』じゃないか。これ、虎嘯と龍吟の順番が逆ってのがミソで、龍は諸葛亮、虎が司馬懿(ドラマの中で魏の宗室にとって危険な虎、みたいな言い方されてた)に対応するんだろうな。で一応このドラマの主役は司馬懿だから、こういう順番なんじゃなかろうか。いや、知らんけど。
まあそれはそれとして。十二国記の世界ではどの国も絶対王政なのだな。しかし絶対的な権力を持つ王であっても、その施政においてはやはり大臣や官僚の協力が必須である、というのがよくわかる。で、王の正統性の根拠は何かというと、天意、ということになっている。天帝の意思に基づき麒麟が選び出す、と。つまり王権神授説なわけだ。しかしながらヨーロッパのそれと違うのは、王権は一代限り、つまりその家系に王としての正統性があるわけではない、ということ。その分、うまくやれば一人の王が何百年にもわたってその治世を続けることができる(王は仙籍に入っているから基本的に不死)が、悪政により徳を失えば麒麟は死に、王もまた歿する。その後にはまた別の、王にふさわしい人物が選ばれると。易姓革命の思想ですな。
そんなわけで(どんなわけだ)十二国記はまたひと月ぐらい寝かしておこうかなと思います。新作いつ出るんだよ。