野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

今でもちょいちょい聴いてますが何か?

騎士団長殺し』もあっという間に第2部『遷ろうメタファー編』の後編になだれ込んでしまった。

「私」が風穴に入り、小さな横穴に潜り込むまでのくだりは、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を彷彿とさせる。今回は「やみくろ」は登場しない。けど「二重メタファー」が「やみくろ」みたいなもんだろうか。

主人公が友人の雨田政彦が運転するボルボに乗ると、80年代のヒットソングがカセットテープで再生されていた。

「しかし、この人生でもう一度、ABCの『ルック・オブ・ラブ』を聴くことになるとは思わなかったな」
雨田は怪訝そうな顔で私を見た。「良い曲じゃないか」と彼は言った。
(pp.26-27)

良い曲じゃないか。“The Lexicon Of Love”は名盤だと思うよ。第1部の前編で「私」がプジョー205でCDで聴いていたシェリル・クロウの“Tuesday Night Music Club“と同じくらいにね。

最後まで読み終わった感想としては、そうだな、まあ村上作品にしてはけっこうちゃんと伏線が回収されているし、「アレはいったい何だったんだ?」とか「それは結局のところ、どういう意味なの?」というのが比較的少なめ、と言えるんじゃなかろうか。もちろんそれは「当社比」、つまり「従来の村上作品と比べてみれば」ということであって、世間一般の水準で考えれば、「何それ?」と当惑する部分はかなりある。それでもやっぱり、いや、だからこそ(?)面白いんだよなあ。