野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

あれもこれも入ってへんやないか

どうも最近、何でもかんでも「教養としての」って付ければ良いって思ってないかお前ら。ほら、また出てきたよ『教養としてのロック名盤ベスト100』って。

教養としてのロック名盤ベスト100 (光文社新書)

教養としてのロック名盤ベスト100 (光文社新書)

もうええっちゅうねん、と思いながら読んでみた。
いわく、「現代人の基礎教養とも言えるロック名盤100枚を、これまでにない切り口で紹介・解説! 」したのだそうだ。何が「これまでにない切り口」か。「名盤」の選び方が違うのだ。「主観抜き」で100枚が選ばれた、という。どうやって?CDの売上データとかダウンロード件数からビッグデータ解析で、とかいう話かと思ったらそうではない。アメリカの音楽雑誌『ローリング・ストーン』による“500 Greatest Albums of All Time”と、イギリスの音楽メディアNME(New Musical Express)が発表した“The 500 Greatest Albums of All Time”という二つのランキングから、上位にあるものに対して高いスコアをつけて並べなおし、上から100枚取ってきた、とのこと。「しょうもな…」というのが正直な感想だ。そもそも、そういうランキングを選ぶのにこそ主観を思い切り入れるべきちゃうんか、と思いつつ読んでみたわけだが、80位以下あたりだと、「誰それ?聞いたことない…」みたいなのも少なくない。考えようによっては、「名盤」と言われるようなアルバムであっても、名前すら知らないような作品が入り込んでくる可能性だって十分にあるわけで、それでも100枚きっちり耳を揃えて紹介・解説するあたりはさすがプロ、と感心した。まあさすがにWikipediaからコピペ、てなことはやってないでしょ。
でもなー。先に書いたように、こういうランキングは、そこに主観が入るから面白いんじゃないのかな。実際この著者は以前に『日本のロック名盤ベスト100』というのも書いている。その時もできるだけ恣意性を排除して客観的な指標に基づいて選んだにもかかわらず、各方面から「何であの名盤が入ってないんだ」あるいは「どうしてこんな駄作が入っているんだ」というようなクレームがついたのだそうだ。ま、そりゃそうだよな、と思う。そういうもんですよ。で今回はランキングのベースを『ローリングストーン』とNMEにしてがっちゃんしてリストを作ったと。で著者自身が「なぜあのアルバムが入ってないのだ!」と文句を言い、「どうしてこのアルバムはこっちより順位が高いのだ」などといろいろ分析してみせたりしている。うーん、なんかズルいな。音楽評論家としての説明責任を果たしてないじゃないか。ってこの人評論家じゃなくて音楽プロデューサーなのか…
このランキングとわたくしの持っているCDの被り具合をチェックすると、
1位〜20位 4枚
21位〜40位 7枚
41位〜60位 5枚
61位〜80位 2枚
81位〜100位 1枚
というような分布になっている。上位20ではなくて21〜40のあたりにピークがあるのだな。あとランキングにジョン・コルトレーンの“A Love Supreme”とマイルス・デイヴィスの“Kind Of Blue”が入っていたのにはびっくり。“Giant Steps”や“Bitches Brew”ではない、というのが面白いところだ。
所有しているCDでランキングに含まれていた19枚のうち、ボブ・ディランの“Highway 61 Revisited”とローリング・ストーンズの“Let It Bleed”だけは、どういうわけかiTunesライブラリに取り込んでなかったので、ずいぶん長いこと聴いていない。今回あらためてこの2枚のアルバムを引っ張り出してきてキャプチャした。いずれも名盤ですね。