野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

We gotta install microwave oven

日本の農業就業人口は減少の一途をたどっていて、だから国としても新規就農をサポートしたりするのだけど、素人がいきなり思いつきで始めてすぐにモノになるほど農業ってのは甘かねーんだよ。
ということですわね。

農ガール、農ライフ (祥伝社文庫)

農ガール、農ライフ (祥伝社文庫)

『農ガール、農ライフ』という小説は、30過ぎのおねーちゃんが派遣切りにあって仕事をなくし、同棲相手に追い出されて住むところもない、もともと親は早くに亡くなっており身寄りもない、まさに絶体絶命の崖っぷち、マネー・フォー・ナッシング(あに言ってんだ)ってな状態から、
そうだ、農業、しよう。
なんて思いついて実際におっぱじめたものの、次から次へと試練が。というようなお話で、なかなか面白いのだけど垣谷さんの本ってのは口当たりは良いけどテーマはなかなかヘヴィな社会問題を扱っているわけよね。一次産業の衰退とかフードセキュリティとかもさることながら、やはりこの、中間層の没落、みたいな話がどの本にも通底してあるのではないのかね。いや、わたくしは先日の『老後の資金がありません』と本作を合わせて2冊しかまだ読んだことがないのだけど、そんな気がしますよ。あ、それに加えて、社会の中で女性が虐げられ、不当な扱いを受け続けてきたことに対する異議申し立て、もあるな。基本的には面白いストーリーなのだけど、自分が男性であるということはどうしても、この女性からの収奪に対するプロテストが向かう先であることは避けられず、どこか後ろめたい思いが常につきまとい、単純に楽しむことができないのだな。とりあえず、ハッピーエンディングを予感させる終わり方であるのがせめてもの救いだ。
それにしてもこのタイトル、ベースは“No Woman, No Cry”か、あるいはタワレコの“NO MUSIC, NO LIFE”か。いずれにしても「ガール」はちょっと厚かましい気がするけどな、ってそーいうことを言うもんじゃないよ。