日本の農業就業人口は減少の一途をたどっていて、だから国としても新規就農をサポートしたりするのだけど、素人がいきなり思いつきで始めてすぐにモノになるほど農業ってのは甘かねーんだよ。
ということですわね。
- 作者: 垣谷美雨
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2019/05/15
- メディア: 文庫
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そうだ、農業、しよう。
なんて思いついて実際におっぱじめたものの、次から次へと試練が。というようなお話で、なかなか面白いのだけど垣谷さんの本ってのは口当たりは良いけどテーマはなかなかヘヴィな社会問題を扱っているわけよね。一次産業の衰退とかフードセキュリティとかもさることながら、やはりこの、中間層の没落、みたいな話がどの本にも通底してあるのではないのかね。いや、わたくしは先日の『老後の資金がありません』と本作を合わせて2冊しかまだ読んだことがないのだけど、そんな気がしますよ。あ、それに加えて、社会の中で女性が虐げられ、不当な扱いを受け続けてきたことに対する異議申し立て、もあるな。基本的には面白いストーリーなのだけど、自分が男性であるということはどうしても、この女性からの収奪に対するプロテストが向かう先であることは避けられず、どこか後ろめたい思いが常につきまとい、単純に楽しむことができないのだな。とりあえず、ハッピーエンディングを予感させる終わり方であるのがせめてもの救いだ。
それにしてもこのタイトル、ベースは“No Woman, No Cry”か、あるいはタワレコの“NO MUSIC, NO LIFE”か。いずれにしても「ガール」はちょっと厚かましい気がするけどな、ってそーいうことを言うもんじゃないよ。