野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

シリアルキラーはゴルトベルク変奏曲がお好き

トマス・ハリスの新作、ということなので、どんな内容かよく知らないままに買って読んだ『カリ・モーラ』。

カリ・モーラ(新潮文庫)

カリ・モーラ(新潮文庫)

世間にはわたくしのような人々が多いのだろう。『ハンニバル・ライジング』以来13年ぶりのハリスの新作ということになれば、いやが上にも期待は高まるわけで、しかしその期待を裏切られた、というネガティブなレビューの多いことよ。
わたくしはといえば、いやそんなに悪くはないでしょ、けっこう面白いかったよ、というところ。もちろんレクター博士シリーズのあの重厚かつ格調高いサイコ・スリラー、をそのまま期待すると、それはだいぶ違うよな、ということになるわけで、だからまあ文句言ってる人たちの気持ちもわからなくはない。
これまでのハリス作品はすべて映画化されているが、本作もずいぶんハリウッド映画的というか、むしろ映画化を意識して書いてますか?と思わされる部分が多々あり、そのあたりに若干のあざとさを感じなくもない。まあ面白いから良いのだけど。
それにしても主役がレクター博士から若い女性であるカリ・モーラに変わるっていうのはずいぶんな落差だな、と思いつつ今気づいたけど、『羊たちの沈黙』のクラリス若い女性だったし、カリはその路線という感じもあるな。
でもハリウッド映画っぽい割には、グロテスクな悪役ハンス・ペーター・シュナイダーとの最終対決は、ちょっとあっさりしすぎじゃないの?という気はする。やっぱり時限爆弾の起爆装置を解除するのは爆発2秒前だし、銃撃された悪役はもう一度生き返らないとね。