野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

きっちり始末つけなあかんやろ

項羽と劉邦』の中巻。

項羽と劉邦(中)(新潮文庫)

項羽と劉邦(中)(新潮文庫)

時の王朝の失政が続くと反乱が起きて統治者が変わる、というのが歴史の中で何度となく繰り返されていくわけなのだけども、その反乱勢力というのは一枚岩ではなく、その中でもまたあれこれと争いが生ずる、というのがまあ普通のことなのですな。
始皇帝は暴政を敷き、二世皇帝の胡亥は暗愚で宦官趙高の傀儡にすぎず混乱は増すばかり、という中で起こったのが陳勝呉広の乱ってなわけだが、その後にも彼らの尻馬に乗ってあちこちで起こる反乱は、全体的に見れば別に組織立ってやってるわけではないんだから、まあ当然といえば当然か。
一応は項羽劉邦も懐王を担ぐ、同じ反秦軍。とはいうものの、おじが楚の将軍という項羽に対して、もともとが沛のごろつきだった劉邦を、一緒にするのはちと無理がありますわな。
それにしてもよくわからんのが項羽だ。降伏してきた万単位の兵士を平気で穴に埋めて殺してしまうぐらいのサイコパスのくせに、関中に入ろうとするのを劉邦が妨害したので激怒し、てめえぶっ殺すぞと攻め込んだのに対して「ごめんそんなつもりと違うねん」と謝られたらあっさり許してしまう。
えええ?と思っていると調子に乗った劉邦は諸侯に項羽の討伐を呼びかける(ひどいやつだ)。
甘いよ項羽。あそこできっちり殺っとかなあかんかったんやで。
という感じで、本当は500ページぐらいの分厚い一冊の長編で済んだところが、項羽がそんな感じだから決着せず、話はますますややこしくなって下巻へ続く、というわけですな。