野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

アニメも復活させてほしいよね

柳広司氏の新作『ゴーストタウン 冥界のホームズ』を読んだ。

シャーロック・ホームズは『最後の事件』において、宿敵モリアーティ教授との格闘の末、ライヘンバッハの滝に落ち、死亡した。と思ったら数年後に復活した。
というような背景を知っていれば、もっと楽しめたことだろう。
残念ながらわたくしはいわゆるシャーロキアンではないので、そんな話は今回初めて知った次第なのだが、それでも十分に面白い話だ。
何だかアニメみたいな話だなあと思っていたら、もとはアニメの台本として作られていたのが、企画がポシャってしまい、もったいないので小説としてリメイクしたのだとか。なるほどそういうことだったか。

『最後の事件』は、キャラクターとして有名になりすぎたシャーロック・ホームズの暴走に原作者のアーサー・コナン・ドイルが嫌気を差し、主役を殺してシリーズを終了させるべく書かれたのだとか。しかし大人気のホームズを殺してしまったために出版社およびドイルには抗議の手紙が殺到し、掲載誌の定期購読キャンセルが続発、そしてファンによるホームズの葬儀が毎週行われたそうで。あ、そういえば『ベルサイユのバラ』でオスカルが死んだ時にもリアルで葬式が行われたとか。というのはまあおいといて、とにかくクレームの嵐と熱いリクエストに耐えかねて、数年後にホームズを復活させたと。
そうなると今度は、滝に落ちて死んだはずのホームズは、いったいどうやって生き返ったのか(というかどうやって生き延びたのか)、という問題がr立ち上がり、これがまたシャーロキアン達による研究テーマになっているんだとかいないんだとか。本作はその解のひとつなわけだ。

ちなみに、本作には同じワトソン君の他に、拳法とヌンチャクを使う謎の東洋人の助手カトーが登場する。え、それって『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出てたブルース・リーみたいなやつ(あれはブルース・リーじゃないけど)ちゃうん、と思ったらその通りで、原典は『グリーン・ホーネット』のカトーなんですな。つまり東洋人で武道の達人の助手はカトー。とそういう小ネタということだ。いやあ勉強になりました。