野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

タバコのポイ捨てはあきまへんで

『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞受賞とかカンヌでパルム・ドールなどと話題になり、いよいよWOWOWでもオンエアされ、とりあえず録画はしておいた。まだ観てないけど、その前に改めて原作を読んでおこう。
原作は言わずと知れた村上春樹の『女のいない男たち』だ。6年前に文庫で読んだが、例によって内容はほとんど覚えていない。また新鮮な気持ちで読めるってなわけだ。

この本の中に「ドライブ・マイ・カー」という短編があり、もちろんこれが映画の原作ということになっているのだが、実際には他に「シェエラザード」や「木野」も一部含まれ、さらにかなり話を膨らませてあり、つまり映画はほとんど別の物語になっていると思った方が良さそうだ。
実際「ドライブ・マイ・カー」を読んで、ああそういえばこんな話だったなと思い出したが、いやしかしこれで2時間の映画を一本作るなんてのはちょっと無理がありゃしませんか?と思ったものだ。
そもそも、村上春樹作品を映画にするのは難しい、と思う。以前に『ノルウェイの森』を観てそう思った。
小説の登場人物の台詞を、実際に役者が口にするのを聞いて、何だか馬鹿みたいだな、と感じたのだ。
「孤独が好きな人間なんていないさ。無理に友達を作らないだけだよ。そんなことしたってがっかりするだけだもの」
とワタナベがいうのを聞いて、うわあ、と走り出しそうになったものだ。

…ええと、『女のいない男たち』の話でしたね。
どれもこれも、オチの無い話ばかりだな、と改めて思う。回収されない伏線(それは伏線とは言わんか)とか、宙吊りのままの謎、みたいなのも多い。でもそれが良いのよ。
そんなん絶対イヤ、ていう人も結構いるだろうけども。

それぞれの短編に登場する「女のいない男たち」は、だいたい何かをすっかり諦め切っている(そんな風に見える)。
その分楽に生きられるんだろうな、と思うのに、どういうわけか彼らには訳の分からない災厄(とは限らないかもしれないけど、あまり愉快な出来事とも思えない)が降りかかる。
パチンコに狂って借金が嵩んだ、とか酒を飲みすぎて肝硬変になった、という話なら、まあそりゃそうですよね、ということになる。自業自得だ。
そんなわかりやすい因果関係は無い。不条理としか言いようがない。
さて、木野は無事に帰ってこられるのだろうか。