野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

DevKAN2009

XPJUGのメーリングリストに、
「DevKAN(DevLOVE関西)2009MIRAI 〜開発の明日について話し合おう!〜」
なるイベントの宣伝が流れてきた。何だかよくわからんが、「マネジメント・リーダの立場から」というテーマで(株)永和システムマネジメントの岡島幸男さんが講演されるということで、なんだか面白そうなので行ってみることにした。
講演は、

  • SIerからインターネットベンチャーへ 〜転職Before After〜」 デベロッパーの立場から (株)はてな 栗栖義臣さん
  • 「ユーザ要求の向こう側にあるもの」 ユーザの立場から 前川哲次さん
  • 「いまこそ、開発者の愛について語ろう」 マネジメント・リーダの立場から (株)永和システムマネジメント 岡島幸男さん

という3本立て。栗栖さん(id:chris4403)は、最初に「感動的な話やためになる話はありませんのでご了承ください」みたいなことを最初にカマしておられたが、いやいやどうして、はてなに転職してからの栗栖さんの、本当に楽しく仕事をやられている様子が伝わってきて、「ええ話やなぁ」としみじみ思ったものだ。転職後に、「仕事でプログラミングをできるので、以前のように、プログラミングをできないストレス解消のために自宅で『やけプログラミング』をする、ということがなくなった」ということだ。どんだけプログラミング好きやねん、と思った。やはり一流のエンジニアはこうでなければ。
つぎに、てつ。さんこと前川哲次さん。要求以前に、人には欲求がある。グラッサーの「欲求の選択理論」(マズローの5段階理論とは別物)によれば、人間には「生存」、「愛・所属」、「力」、「自由」、そして「楽しみ」という基本的な5種類の欲求があり、そのスペクトラムは人によって違う。このように形作られる固有の世界を「上質世界(= Quality World)」とよび、人はこれによって動機づけられる。だからその「上質世界」を押さえて、そこに入り込め!と。まさかソフトウェア関係のイベントで、こんな話を聴くとは思いもしなかった。でも要求分析みたいなことを究めていくと、こういうところに踏み込んでしまういうのもわかる気はする。
そして岡島さん(id:HappymanOkajima)。少し前に「ソフトウェア開発を成功させるチームビルディング」を読んで(http://d.hatena.ne.jp/neubauten/20090515 参照)、その作者が講演するなら、ということで今回のイベントも参加してみたわけだが、どうもこの本、岡島さんの著作の中ではあまり売れ行きが思わしくないらしい。とても良い本ですぜその筋の皆さん。ぜひ買って読んでみられたし。
開発チームとマネージャの間には壁があり、それが緊張関係を生んでいる。その壁は、「開発チームとマネージャの成功モデルは異なる」という誤解にもとづいているのだが、違うように見えるそれぞれの成功モデルも、よく見てみれば実は本質は同じなのだ。だからお互いに歩み寄る努力をしようぜ。ていうのが今回の話だった、と思う。ケントベックからドラッカーまで登場してけっこう中身が濃く、30分という枠には収まりきらない内容だった。足りない分は後のダイアログセッション、そして懇親会で補わせてもらったが、でももっと色々と話を聴いてみたい。岡島さん今回初めてお会いしましたが、ナイスガイ(←死語)でありました。
講演の次はライトニングトークス、略してLT。噂に聞いたことはあったが、実際に体験(といっても自分でしゃべるわけじゃないが)したのは今回が初めて。「泣いても笑っても1人5分 自由に喋る」というやつだ。これ、なかなか面白い。もともと「俺に喋らせろ!」という連中に対して、放っとくと延々喋り続けるので、制限時間を切ってトークをさせるというものだったらしいが、このシビアな制限時間というやつが、何とも言えない緊張感を持たせていると思う。小枝さんの「テスター駆動開発」の話なんか、内容そのものも面白いのだが、話の真っ最中にPCの電源が落ちてしまい(バッテリ駆動だったから)、慌てて席に戻ってACアダプタを取ってきて、復帰させてプレゼンを続行させる、というハプニングがあった。この1〜2分のロスタイムのために途中を少し端折りながらも、なんとかプレゼンを完了させるとほぼ同時に制限時間となった、という実にドラマチックな展開に、満場が惜しみない拍手を送った。他の誰よりも大きな拍手だったのではないか。
せろさんのモテ系トラブルシューター・非モテ系トラブルメーカーそれぞれのデバッグの仕方、についての話も面白い。実はこれ、ちょうどいま読んでいる「CODE COMPLETE」下巻の「デバッグ」の章に、「効果の低いアプローチ」と「科学的なデバッグ」として対比して書かれている内容そのままだ。
そして、「ダイアログ」。同じ机に座っている5〜6名ほどで感想でも議論でも各自の想いを語る、でも何でも良いから話をしましょう、というなんだか無茶な話。と思ったのだが、いずれのテーブルも随分と盛り上がっており、騒々しいのなんの。これまた色んな人の話が聞けて面白い。
あっという間に時間が過ぎて、気づけば午後6時を回っていた。主催者のpapanda(id:papanda0806)さんによる「関西、すげぇな」というコメントによりめでたくクロージングとなった。
そのあとは場所を「甘太郎」に移して懇親会と相成った。ほとんどが初めて会う人ばかりだが、次から次へとあれこれ話は尽きず。いやぁ同業者(?)っちゅうのはえらいもんでんな。
まあそんな感じですっかり酔っ払って帰ったわけだ。あー面白かった。