野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

料理は技術です、と林先生はおっしゃいました。

世間は食品偽装だか不当表示だかの話題で持ちきりだ。
事の発端は、阪急阪神ホテルグループの「芝エビ」だったか。あのとき某バールを営むMさんは、「ダメですよ。あんなことどこのホテルでもやってる事なんですから」と言ったが、まさにその通りとなったわけだ。
芝エビ、伊勢エビから始まって、フレッシュジュース、黒毛和牛、なんとか地鶏… しまいには、宮崎県産豚肉と言ってましたが実は岩手県産でした、なんて実際どっちの方が良いんだかよくわからない話とか、牛脂を注入した肉を焼いたものをステーキと称していました、とか、なんだか重箱のすみをつつくような話になってきてやしませんか。何も彼らの肩を持つつもりは無いのだが、とにかく肉を焼いたものをステーキと呼んではいかんのですか。だいたい牛脂を注入、とかいうとちょっと気色悪いけど、すき焼きするときって鍋に牛脂をひきませんか?ああやりませんかそうですか。でもうちはやります。スーパーの肉売り場に置いてあるよね。たぶん牛脂でも入れないとバサバサで美味くない肉だったんでしょね。まあそれで高い値段を取ってたからみんな怒ってるんだけどさ。結果的にその時、「こりゃ美味い!」って食べてたんだったら、あんまり文句ばっかり言えないんじゃないかとね。食材はそこそこなのを調理上の工夫でカバーした、っていう言い方もできますわね。そういや近鉄の初期のコメントもすごかったな。返金はしない、ということについて「値段相応のサービスは提供している」ってね。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131101-OYT1T00210.htm
これって言い方を変えれば、「普通あの値段でステーキなんか食えるわけないだろバーカ」ってことよね。そりゃまそうなんだけどさ、それをいっちゃあおしまいなわけよ。
業界側からのコメントと言えば、「小さいエビを『芝エビ』、大きいエビを『車エビ』と呼ぶのが業界の慣行だった」っていうのもなかなか味わい深い。
http://mainichi.jp/select/news/20131027k0000e040106000c.html
なんでやねん!と突っ込みたくなるが、でもよく考えてみると我々だって、合成樹脂製のバケツはみんな「ポリバケツ」って呼んでないか?書類に100均で買ってきた「ポストイット」でメモを貼り、「ホッチキス」で穴を開けて「キングジムファイル」に入れて「セロテープ」でラベルを貼ったりしてないか?泡の出るワインはなんでもかんでも「シャンパン」ていう人はけっこう多いし、iPodのことを「ウォークマン」って言った人もいただろ(あんまりいないか)。さすがにコピー機のことを「ゼロックス」っていう人はもういないと思うけど。「これはアスクルのオリジナル製品ですからセロテープではありません」とか「いえこれはボルドー産ですからヴァン・ムスーです」なんて言っても、なんだこの面倒くさいヒト、と煙たがられるのがオチだろう。
えーとだから何が言いたかったかというと、件のコメントも、単に苦し紛れの言い訳とは限らなくて、実際のところ結構そういうものかもしれんな、と思った次第。いや何度も言うようだが、彼らを擁護するつもりは毛頭ありませんよ。ただ、みんなで寄ってたかって、次から次へとあれこれほじくり返しては糾弾する、ていうこの空気がね。ちょっとうんざり気味、とまあそんな感じなわけですよ。
ちょっとしんちゃんのところに、バナメイエビを使った美味しいエビチリでも食べに行こうかな。