野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

何度でもぷぷぷと笑った

ASIAN KUNG-FU GENERATIONって別にキライじゃないけど、正直それほど好みじゃない。でもゴッチこと後藤正文の言動にはちょっと注目していた。で、『何度でもオールライトと歌え』も読んでみたいと思っていた一冊。

何度でもオールライトと歌え

何度でもオールライトと歌え

  • 作者:後藤正文
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2016/04/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
アジカンの公式サイトに書いていた日記を集めたもの、であるらしい。そのお題は硬軟取り混ぜて多岐にわたる。原発、戦争、政治、というビッグイシューに対しても、決して高踏的ではなく「街で見かけた変な爺さん」について、と同じように語られる。ユルい、というだけではない、やはりそこには正直であるとか知的誠実さみたいなものが感じられ、すっと入ってくる。もちろん、彼の思想そのものがわたくしにとって、とても共感・共鳴できる、ということもあるのだけど。
何も難しい話ではなくて、平和に、みんな機嫌よく日々を暮らせたら良いよね、ということなのだ。こんな一節があった。

実家に帰って、美味しいカツオの刺身が食いたい。ぬるめのお湯で新茶を飲みたい。桜えびのかき揚げを齧りたい。吉田の鰻をスーパーで買って食べたい。牧ノ原に登って大井川を眺めたい。岸の山から60ドルくらいのしょぼい夜景を見たい。静波の海岸で「やっっぱり海水浴向いてないわー」って思いたい。友だちや家族と「おんな泣かせ」という清酒で一杯やりたい。親戚の田んぼで田植えをしたい。そういうものを全部、取り上げられたくない。いつか死ぬけど、死ぬまで失いたくない。死んだ後も、残っていてほしい。
泣けてくるほど、そう思う。強く。強く。強く。(pp.58-59)

これを読むたび、なんだか泣きそうになる。うん、そうだよゴッチ、そうことなんだよ、って。