「貧困大国」シリーズ第2弾、「ルポ 貧困大国アメリカ II」いってみました。
- 作者: 堤未果
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/01/21
- メディア: 新書
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今回は特に教育と社会保障に注目。
少々無理してでもとりあえず大学へ行って学位とっとけ、でないと一生マクドで低賃金でこき使われるワーキングプアだぞ、と脅して学資ローンを利用させて借金漬けにする。でも大学を出たからってそうそう仕事があるわけじゃない。とりあえず飲食店のアルバイトで何とか食いつなぐわけだがローンの返済は滞り、あっという間に利子がついて借金が膨れ上がる。ロクな食事もできず過酷な労働に従事していると、そのうち病気になる。しかしこの医療費というのがまた法外に高い。保険に入っとこうと思っても保険料もバカみたいに高い。うまいこと保険に入っていても、なんだかんだ言って保険会社は支払いを拒否する。そもそも医者にかかったとしてもまともな治療をしてもらえるかどうかもかなり怪しい。そうこうするうちに借金は返済不能な額まで増えてしまう。後はもうホームレスになるしかない。で公園で寝泊まりしていると警察に違反切符を切られて刑務所に入れられる。刑務所内での労働の対価は時給40セントだが、部屋代と医療費が毎日2ドル引かれる。そもそも逮捕された日付で、法定手数料300ドルと囚人基金の積立金25ドルが請求されている。ちなみに刑務所内での備品は市場価格の1.5倍ほどの値段がついており歯磨き粉は1本5.95ドルだとか。このような刑務所が提供する格安の労働力は、企業により製品の組み立て作業や電話交換手や番号案内に利用される。
「まさに民営化された旧国営事業のうち、いまもっともトレンディな投資先 ーー 順調に増加する有罪判決と逮捕率が確実な利益をもたらしてくれます。急成長するこのマーケットに今すぐ投資を!」
冗談のようだが、大手投資会社の作成したパンフレットだそうだ。「刑務所ビジネス」は、軍需産業やIT産業とならんで、いま最も利益率が高く、人気急上昇の投資先らしい。
おぞましい話だ。
わかりやすい悪者のブッシュを追い出して、さっそうと登場したオバマ大統領にみんなが期待していた。しかし「チェンジ」はどこへ行った?医療保険改革は結局医薬品業界や保険業界に骨抜きにされてグダグダか?
すごいな、と思ったのは、「だからオバマなんてとっとと辞めさせろ」じゃなくて、「オバマを動かせ(Move Obama)」というスローガンが立ち上がるところだ。チェンジは待つものではなく起こすものだという人々がいる。っていうのが、なんだかんだ言ってアメリカという国の底力かも、とちょっと思った。