野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

私たちはケヴィンについて語らなければならない

三連休の最終日に行ってきましたよ、「少年は残酷な弓を射る」。
いやもう、すごいですな。殺伐として、ほとんど救いのないサスペンス。まったくダレることなく2時間スクリーンに釘付けですよ。
息子ケヴィン役のエズラ・ミラーのとてつもなく美しく、そして邪悪なこと。
主人公でありケヴィンの母親であるエヴァによる回想をはさみながら物語は進んで行くのだけど、ケヴィンが過去に起こしたという「母親のすべてを破壊した」という衝撃的な事件の全貌がその中でだんだんと明らかになってくるプロセスがまたなんとも言えずおぞましい。
映像的には、赤と黄色が象徴的、かつ印象的に使われている。そもそも最初のシーンがスペインだかコロンビアだかのトマト投げ祭りの馬鹿騒ぎ(の回想)で始まるわけだが、目を覚ましたエヴァが外に出てみると、何者かの嫌がらせにより、家の外壁や車に赤いペンキがぶっかけられていたりする。この時点で、「なぜそんなことになっているのか」の説明など一切無く(あとでだんだんとわかってくるのだが)、以降も、スーパーで立ちすくむエヴァの後ろに積み上げられたトマト缶、オムレツとトマトケチャップ、パンに塗りたくられたジャム、エヴァが飲む赤ワイン、などのかたちで、これからもたらされるであろう災厄の予感として繰り返し繰り返しあらわれる。
そしてやはり何といってもケヴィンのグロテスクさだろう。幼児の時から、母親エヴァに対して向けられる悪意に満ちた表情と、それ以外の人間に対する天使のように愛らしい表情との落差。刑務所で母親と面会中に、一切口をきかず、ただ自分の指の爪を噛み取ってはテーブルの上に並べていく。母親とディナーへ出かける直前に、キッチンで巨大な肉塊にかぶりつく様子。そして何といっても、妹が失明し義眼にしなければならないかもしれない、という話を聞きながらライチの皮を剥いてくちゃくちゃ食べるシーンのおぞましいこと。
こんな異様な緊張感に満ちた映画ってなかなか無いんじゃなかろうか。

とりあえず、観にいく前にヨドバシの麻甜で麻婆豆腐セットを食べておいてよかった。あの映画の後ではちょっとキツいわな。
http://www.facebook.com/photo.php?fbid=366400070095525&l=45ff84eecc
あの麻婆、ビビって小辛にしてしまったがちょっとフヌケ感が無きにしもあらず、だったから、ちゃんと花椒の利いた「おすすめ」の中辛にしとけばよかったかもな。