野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

レストランなんかビストロなんかどっちやねん

「タルト・タタンの夢」を読んだらなかなか面白かったので、続編の「ヴァン・ショーをあなたに」が文庫化されるのを待ち構えていた。

商店街にある小さなフレンチレストラン、「ビストロ・パ・マル」の三船シェフは、名探偵だ。
といっても、レストランの客が次々と変死体で発見され、現場には必ずタルト・タタンが残されていた。とかそういう話ではない。謎解きをするのは、まあ日常の些細なことばかりだ。その謎解きの小道具に、ヴァン・ショー(ホットワインですな)。何か事情があって口を閉ざしている関係者から証言を引き出すために使われる。頑なな彼または彼女に「ヴァン・ショーでもおひとつどうどす?」と飲ませて油断したところにばさっと斬り込んでしゃべらせる。刑事ドラマで容疑者に食べさせるカツ丼みたいなもんだ。
ところが、そのヴァン・ショーがタイトルになっているにも関わらず、本作においてはそのカツ丼的用法がまったく現れない。そもそもヴァン・ショー自体、出てくるのは一番最後に収録されている表題作のみである。まったくどうしたことか。
って別にそんなのどうでもいいんですけどね。
んなアホな、そんなんわかるわけないやんけ、とツッコミながらもついつい読み進める。そして料理はみんな美味しそう。にんにくとトマトとベーコンで作ったスープに古くなったパンと卵を入れて、半熟になった卵を崩してパンに絡めながら食べる。スープ・ド・ブーランジェというらしい(そのまんまやがな)。これが特に美味そうなので近いうちに作ってみようと思う。