野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

しゅべらど、とか

筒井康隆の短編小説「走る取的」は『将軍が目醒めた時』に収録されている、と長い間(30年以上)思い込んでいたけれども、それは間違っている。盆休みに実家に帰った時に確認した。正解は『メタモルフォセス群島』だった。何てこった。個人的に『将軍が目醒めた時』は筒井作品の中でベスト5に入ると思っていて、一方で「走る取的」もまた大変な名作なので、『将軍が目醒めた時』に入っていると勝手に思い込んでいたのだな。
てなわけで久しぶりに読んでみることにした。実家の新潮文庫はもうぼろぼろになっていたし古い紙が臭いので、Kindleにて。

将軍が目醒めた時(新潮文庫)

将軍が目醒めた時(新潮文庫)

この本には「乗越駅の刑罰」が収録されている。これまた「走る取的」に負けないぐらいに不条理な恐怖に満ちた名作だと思う。この短編集の中でもっとも強烈に印象に残っている。本能寺の変の後の「中国大返し」をネタに、秀吉に電話をかけさせたり新幹線で移動させたり、という「ヤマザキ」はぶっ飛んでいてワイルドだ。桜田門外の変で暗殺された井伊直弼の首を奪い合う「万延元年のラグビー」はパンクでスラップスティック。「しゃばどす」とか「ざど」というオノマトペが何とも、斬新にしてリアル。そういえば『千と千尋の神隠し』を観たとき、油屋の外観はこの本の「家」を読んだ時に思い描いたビジュアルそのまんまだ、と思ったものだが、今回改めて「家」を読んでみると、だいぶイメージが違うな。
まあとにかく、やっぱりスゴいわこの本。『メタモルフォセス群島』もまた読み直さないとな。