北大路公子大先生の新刊『すべて忘れて生きていく』が出た。もちろん読む。
- 作者: 北大路公子
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2018/05/10
- メディア: 文庫
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相変わらずどうでも良いような話をいつもの調子の書いておられるなあと思ったら、これがなんとPHP(プログラミング言語じゃない方)の「一歩ふみだそう」なんていう特集に寄稿したものだったりする。そんなことして良いのか?と思ったが、そういう目で見ると、これはこれで「アリ」な感じに思えるから不思議なものだ。
そして第2章まるっと相撲ネタに割かれており(「相撲好きにもホドがある」というタイトル)、この大部分が『相撲ファン』という雑誌に掲載されたものであるらしい。元から相撲好きを公言しており、エッセイにも相撲のことがよく出てくるケメ子先生だが、ここまでがっつりと相撲について語られたものはあまり記憶にない。この章はとにかく、ケメ子先生のあふれんばかりの相撲愛に満ちており、相撲に対してまったく興味のないわたくしが読んでも、ちょっとした感動を覚えるほどである。そして圧巻は第3章の「呑んで読んで 呑まれて読んで」、タイトルからわかるように書評集である。これが、いつものダメな感じのネタをぐだぐだと語り始めたかと思ったらそれはマクラ的に本の内容とつながっており、ごく簡潔にその内容を紹介するとともに、前述のダメなネタと絡められたケメ子先生の見解が披瀝され、その評はどこかしかるべきところに収まっていく。これが実にさりげなく、ほんの2ページ弱の間でまとめられる。熟練した職人の仕事を見るようで、感嘆する。そしてまた、紹介される本のほとんどが知らないものばかりであるが、ちょっと読んでみたいなと思わされるものがいくつも出てきて難儀した。いや別に困るこたないんだけども。ちなみに筒井康隆の「走る取的」はわたくしが読んだ時は『将軍が目醒めた時』に収録されていたのだが、今は『メタモルフォセス群島』に入っているらしい。どういう事情なのだろう。『将軍が目醒めた時』はわたくしの中で筒井作品のベスト5に入る一冊だと思っていたのだけど。
まあそれは良いとして、第4章の『奇談集』。これがまた、いつもエッセイのなかで暴走しがちなケメ子先生の妄想を、きっちり短編小説の形でふくらませたもの、という印象だ。で、これが妙に完成度が高くて、ちょっと驚いている(失礼?)。これ、河童ネタも合わせてちょっとした短編集ができてしまうんでないの?
という感じで、いやあケメ子先生って意外とちゃんとした作家なんですね、というのが全体を通しての感想だ。ほんま失礼やな。はい、すんません。