この前「クラシックCDの名盤 大作曲家篇」を読んで、これはぜひ「演奏家篇」も読んでみなければ、と思ったのだ。
いやもうほんとに、このヒトたちは… と呆れてしまう。
まあとりあえず、人の好みってのは色々だな、と思う。が、それにしても宇野先生の好き嫌いは激しすぎるというか、もう好みでない演奏家に対してはばっさりだ。バレンボイムは「才能の無駄遣い」、ケンプは「女々しい」、ホロヴィッツは「天才だが無教養」、ギレリスに至っては「存在しなくてもさっぱり困らないピアニスト」で「ほんのわずかなシンパシーも持っていない」と斬り捨て、推薦盤も挙げない…
もっとも、宇野節と並べるからさほど目立たないけれども、他のお二方もけっこうひどい。中野先生に言わせればランランは「実に厭みなスタイル!」だし、福島先生はラトルの指揮したウィーン・フィルの公演を聴いて「このペテン師野郎!」と怒り心頭だ。
まあ、どうやらわたくしと宇野先生の好みはまったく逆のようなので、宇野先生がこき下ろして他のお二人が推薦するのを選ぶと良いのでは、と思ったけど、ケンプはちょっとなあ、というのだけは同意する。さすがにカザルスあたりだと、誰も貶したりしないのだけど、ポリーニなんかは酷いもんで、三人とも実に冷淡で、宇野先生は「聴いているのが苦痛」福島先生は「伝えるべきものが何もないのにテクニックがある」と、そりゃもう散々。ブレンデルも似たようなもんだ。「これだけ世評の高い人をタイトルから落とすわけにはいかない」から取り上げられているんだそうで。やれやれ。
もちろん演奏家をdisりまくるのがこの本の主旨ではない。お三方それぞれの推薦盤、あるいは彼らが実際に体験したコンサートなどについて語るときは、よくもまあこんな表現を思いつくよなあ、というぐらいに絶賛だ。さすがにちょっとボリュームが大きすぎて、コアなクラシックファンでもない限り、ちょっとばかし持て余すが、まあそれなりに楽しめましたです。もっと詳しければさらに楽しめたことでしょう。