野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

せやけどあんたそれ作り話やで

いずれは読んでみなければ、と思っていた『ベルサイユのばら』についに着手したのが、実は昨年の暮れだった。妻が友人から借りてきてくれたのがなぜか2巻〜10巻だったので、とりあえず1巻はKindleストアでダウンロードして読んでいた。続きは正月に実家で読もうと思っていたのに、持って帰るのを忘れていて、やっと本日残りを一気読みしたという次第。
紙の本で2巻を読み始めると、マリー・アントワネットの乗った馬が暴走している。あれ?こんな話どこから?と改めてKindleの第1巻の最後を確認すると、仮装舞踏会でフェルセンがマリー・アントワネットを誘っているのをオスカルが妨害して一触即発、という場面。おお、やはり話がつながってないぞこれ、と思ってKindle版の第2巻をダウンロードして読んでみたら、やっと話がつながった。どうも紙の本とKindleで巻の切れ目が違うらしい。ややこしいこっちゃ。ちなみにKindle版第2巻は現在0円。これはラッキー、と思ったがほんの一週間前に買った第1巻も0円だ。うむう。
ベルサイユのばら コミック 全10巻完結セット (マーガレット・コミックス)
まあそれはそれとして。
わたくし恥ずかしながら、マリア・テレジアハプスブルク家の女帝だったということ、マリー・アントワネットはその娘でオーストリアから嫁いできたのだ、ということを今回初めて知った。何てこった。
マリー・アントワネットルイ16世との政略結婚からフランス革命までの話の流れは概ね史実に基づいたものである。それだけでもなかなかにドラマティックだと思うのだが、そこに男装の麗人・オスカルという架空の人物をトリックスター的に加えることで物語は一気にカラフルに、というか妖しい色彩を帯びるわけだな。
古代中国の漢王朝は宦官と外戚が交互に朝廷を私物化し専横の限りを尽くして衰退していった。ブルボン朝の場合は宦官でも外戚でもなく、赤の他人であってもここまで無茶なことができるのだな。これはすごい。やはりシステム的に何らかの不備があると見るべきか。いやとにかく、マリー・アントワネットの浪費は、漫画で読むだけでも、なかなか辛いものがある。
本作の連載中、オスカルが死亡した時に現実世界でも実際に葬儀が行われたという。すごい話だ。強い想像力は、現実を変成する力がある、という。比類ないほどに強靭な想像力により史実の上に再構築された物語はやはり、現実にいくぶんかの歪みを生じてしまったようだ。あんただいぶ力持ちやな…