野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

フランクフルトまで30時間もかかるのかよ

白い巨塔』第3巻。噴門癌の手術をした佐々木傭平さん、一週間後に肺に転移していた癌が急に増悪し、癌性肋膜炎を発症して死んでしまったよおい。

白い巨塔(三)(新潮文庫)

白い巨塔(三)(新潮文庫)

これがまた財前君の海外出張中の出来事で、ミュンヘンあたりで調子に乗っている時にそんなことになり、ついには遺族から医療過誤により訴えられる始末。手術の前に担当医が、肺の影が気になるので断層撮影をしておいた方が、と進言したのを却下し、また、傭平さんが呼吸困難で苦しんでいるのを術後肺炎と決め付けて自分でまったく診察しようとしなかった、てなことの結果なわけで、まあ自業自得よね。せっかく腕が良いんだからもうちょっと慎重にやれば良いのに、そういうところが雑というか脇が甘いというか。
まあそれにしても、この第3巻の見どころはやはり、法廷での息詰まる応酬、ですかね。癌の転位を見過ごしたことを舌鋒鋭く追求する関口弁護士と、ああ言えばこう言う、の財前被告。そして大河内教授の厳正にして取りつく島もない証言が圧巻で、知的誠実さってものの、ひとつのショーケースですわね。こういう朴念仁というかヘンコ爺さんとはリアルであまり関わりたいとは思わないけども。
何だかんだでとりあえず裁判には勝った財前君、そして己の信念を貫いたがために職を失うことになってしまった里見君。あんたらこれからどうするつもりだ?という感じで第4巻に続く。