「人という字は、人と人が支え合っている様子を表しているんです」と金八センセイはおっしゃるが、残念ながらそれはガセネタらしい。あれは、人間が向かって左を見て横向きに立っている様子を表した象形文字がルーツなんだそうで。ちょっと猫背。
そういう、漢字の謎の解明に一生を捧げた知の巨人、白川静その人と、彼の研究成果をわかりやすく解説した本、その名も「白川静 漢字の世界観 」というのを読んだ。
- 作者: 松岡正剛
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2008/11/15
- メディア: 新書
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当時信じられていた漢字の歴史というか成り立ちに対して異議を唱え、独自の仮説によりその発祥を体系的に解明した彼の理論は、異端として扱われていたようだ。しかし、「サイ」(アルファベットのAをひっくり返したような形)をいわばキーパーツである「漢字マザー」として設定し、そこに日常的に巫術や卜占を駆使していた古代中国の風習や民俗に基づく、色々な記号と組み合わせることで漢字を組み立てていく様子は、とてもエキサイティングだ。今日我々が使っている「へん」と「つくり」に分けて、漢字の意味を考えるやり方は、実はあまり正しくないようだ。いや、いくつかのパーツの組み合わせにより漢字が成り立っているというのは正しいのだが、それらのパーツは、実はオリジナルのものから変わり果ててしまっているものも少なくない。
彼のそんな研究の集大成である「字統」、「字訓」、そして「字通」、いわゆる「字書三部作」はとても気になる本のリストに加わった。しかしこれまた読むのにはとてつもなく苦労しそうな予感がする。