野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

極悪非道の正しい使い方

以前、マキアヴェリの「君主論」を読んだのだが、まあはっきり言って、あんまり面白くなかった(2007年1月16日のエントリ参照)。
だけど先日書店で見かけた「よいこの君主論」はめっぽう面白いぞ。

よいこの君主論 (ちくま文庫)

よいこの君主論 (ちくま文庫)


君主論」のケーススタディ、ただしモデルは小学校5年生。クラスを制圧しようと権謀術数を駆使し、奸計をめぐらしまくる様が描かれており、これが大変に面白いのだ。オリジナルを読んでも「ふーん」だったわたくしも、本書を読んであーなるほどね、と思ったことだ。それにしても出てくるキャラクターの多いこと。んなもん憶えられるかよ。まあ40人学級だから仕方ないけどね。だけどキャラを無駄に作り込みすぎとちがうか。「まあやちゃん」は「私生活では劇団に所属しているが、最近悪質なストーカーから紫の薔薇を頻繁に送りつけられて困っている」なんて本筋と関係ない小ネタを仕込むのはやめようぜ。話がややこしくなるからさ。
群雄が割拠する5年3組のなかまたちの様子を見ながら、クラスで覇を唱えようとするたろうくんとはなこちゃんにふくろう先生がマキアヴェリズムを講義するわけだが、この3人の会話がまた何とも言えず楽しい。

はなこちゃん「そう考えると、ひろしくんもりょうこちゃんもとても立派な君主なのね。彼らは美徳を身にまとっているように見せかけながら、その実、人を騙し罠に嵌めること以外は、なに一つせず、なに一つ考えようともしていないわ。そのうえ、力強く断言し、熱烈に約束し、友情に訴え、心を開いたように見せながら、なに一つ約束なんて守らないもの。実に立派だわ」
たろうくん「ようし、僕も外見だけは立派な人間であるかのように振る舞うぞ!」
ふくろう先生「その意気だよ。がんばってね、たろうくん」

とまあ全編この調子だ。
著者はこの本を書いた理由のひとつとして、「マスコミやPTAが有害図書としてバッシングしてくれれば、話題になって売れると思ったので」と挙げているが、さて、うまく行きますかどうか…