野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

ニーチェと三島と村上春樹

とあるご縁により、近畿大学文芸学部の教授、清真人さんとお近づきになる機会を得た。さらにありがたいことには、清さんのご著書までいただいたんである。
村上春樹の哲学ワールド」。これまた面白そうではないですか。


清さんはつい最近(2008年ごろ)まで、村上春樹作品については「敬して遠ざけていた」のだそうだ。それがある日、書店でふと手にとった「海辺のカフカ」の文庫版に引き込まれ、三日間ほどで一気読みしてしまったと。それがきっかけとなり、いつの間にか村上春樹論を書くことになってしまったらしい。
この本では、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」、「ねじまき鳥クロニクル」、「海辺のカフカ」、そして「1Q84」を「ニーチェ的四部作」と呼び、ひとつの連なりをなすものであるとして読み解いていく。
はっきり言ってしまえば、わたくしはニーチェに関してはまったくの不案内である。したがって、上記の四部作における「ニーチェ的なもの」を取り出し、ニーチェの思想と照合していく作業については、残念ながらほとんど理解することができなかった。おそらく将来ニーチェを読むときには、逆に「村上ワールド」から見ることによって、理解を助けることができるんじゃないかという期待はあるけど。
たとえば、「羊をめぐる冒険」において羊が語る「原初の混沌」。これは村上作品において頻繁に現れる、善悪の別を超越した強大な力、時に理不尽で不条理な暴力として発露する何か、だと思う。この「原初の混沌」はニーチェにおける≪力≫であり、「力への意志」の思想である、というわけだ。
なるほど。
というわけで、よくわからないなりに、なんだか刺激に満ちた一冊なんである。