野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

El Numéro Catalunya

バルセロナというと常に晴れ、というイメージがあるのだが11月は雨季にあたっている。
3年前のそのころにバルセロナを旅行したのだが、やはり滞在中はほとんど雨か曇りだった。カタルーニャ音楽堂やピカソ美術館にも行くつもりにしていたが、天気が悪いためあまりあちこち歩き回ることもできず、あきらめた。11月とは思えない寒さに震えながら、ダリ美術館近くの路地裏にあるバルで遅い昼食がわりに飲んだソパ・デ・アホはたいそう美味だった。
そんなバルセロナをネタにして中沢新一さんが書いた「バルセロナ、秘数3」なんて、どんな内容か知らなくてもタイトルだけで読んでみたくなるではないですか。

話は我々が行けなかったピカソ美術館から始まる。美術館のカフェでセルベサを飲みながら、パスカルの数学研究に関する本を読んでいると、謎の伊達男ジョアン・モレラが算術三角形について「エル・ヌメロ・カタルーニャ」とだけ言って、ブランデーに酔っ払って寝てしまう。「エル・ヌメロ・カタルーニャ」、3はカタルーニャの秘数なのだ。そこにはカタルーニャの人々にしか理解できない、世界の秘密を開く鍵が潜んでいるという。
カタルーニャはその歴史の中で、領土を拡張しようと三度大きな戦争をしかけ、三度にわたって外部からの侵略に対して抵抗し、共和国が三回できた。そして国旗は3x3=9本のオレンジと黄色のストライプでできている。カタルーニャの地図は三角形をしており、そしてCATALUNYAは9文字だ。
3は、女の数である2と男をあらわす1がひとつになって、運動をまきおこし世界をつくりだす、結婚とエロティシズムの数だ。一方で4は、完全な原初の正方形をかたちづくり、すべてのものの循環をあらわし、正しい平衡と比率をしめす、神と正義の数である。
秘数3の魔力を吹き込まれた都市バルセロナは、カスティリャ・スペイン、イサベル女王、カソリック教会、ハプスブルク家ブルボン家、ナポレオン、フランコファシズム、などによる「4」とずっと闘ってきた。
なんていう話だ。正直、いったい何を言ってるんだかさっぱりわからない。だけどなんだか面白いし、何よりもやっぱり中沢さんの文章はかっこいい。意味はわからないけど、まあ別にそれでもいいか、という気にさせる不思議な本だった。
酔いどれモレラに言わせれば、ことはもっと単純で、バルセロナはバル=酒場、セル=空、オナ=波の三つでできている。だからバルセロナは空と海のはざまに浮かぶ酔いどれ酒場、空と海と酒場の三位一体としてつくられる、神聖なる酩酊都市だ。うん、なかなか素敵なアイデアだ。