入江敦彦さんの「KYOのお言葉」が、京都の言葉にひそむ陰翳と機微、そして京都人のあまりの底知れなさを見せつけ、「よそさん」であるところのわたくしの心胆を寒からしめたことは記憶に新しい。今回はさらにディープな、「イケズの構造」を読んだ。
- 作者: 入江敦彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
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世間一般に信じられているように、単純にイケズ=意地悪ではない。では何なのか。それはこの本に書かれている。が、読んでもわからない。いや、わかるような気はするが、言語化できるような性質のものでは無いようだ。少なくとも、辞書に「イケズ」というエントリがあり、そこにさらさらっと二言三言で定義できるようなものではないだろう。本書に散りばめられた「イケズ」のサンプルは、言葉のダブルバインド性を極限まで追い込み、洗練の域に達したひとつの芸、という感じさえうけてしまう。
この「イケズ」は、実は京都人だけのものではない、というのがまた面白い。三島由紀夫もココ・シャネルもジャン・コクトーもフロイトもシェークスピアも、みんなイケズ。シャークスピアの京都語訳がまた秀逸である。源氏物語の京都語訳も素晴らしかったが。とりあえず、源氏物語とシェークスピアについては京都語訳を出してもらえませんか入江さん。