野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

やればできるじゃないかキース

バッハのゴルベルク変奏曲を初めて聴いた、というか意識したのはたぶん映画「羊たちの沈黙」だったと思う。これは良いじゃないですか、と買い求めたCDは、バッハといえばグールド、の1981年版だった。
もちろんグールドの演奏は素晴らしいのだけど、なにぶんピアノで弾いているわけだから、最初に聴いたチェンバロのあの感じとはやっぱり「ちょっと違う」というのが正直なところだ。
と言いながらも別に他の演奏者によるものを色々と漁ってみるでもなく今まできたわけだが。
先日ツイッターでキース・ジャレットによるゴルベルク変奏曲について紹介されているのを見て、そういやそんなのもあったよな、と思った。んでまあちょこっと試聴してみたら、おおこれは結構良いかも、となった。最近ありがちなパターンだけども。
それでもCDは2500円ぐらいしていて、まあそのうちiTunes Storeででも買うか、ぐらいに思っていたのだが、Amazonで1600円ぐらいになっていたのを発見してしまったからもうしかたがない。

Bach: Goldberg Variations / Keith Jarrett

Bach: Goldberg Variations / Keith Jarrett


このアルバムでキースはハープシコードを弾いている。そう、やっぱりあの感じはピアノではなくハープシコードでないと。
ジャズ的にくずしたりせず、正統派のクラシックの演奏だ。グールドに比べると、ゆっくりと、ていねいに弾いている感じ(グールドが雑、と言っているわけではないよ)。
何よりも驚いたのは、あのキースがいつもの奇声をまったく発することなく演奏していることだ(驚くところかなそれ?)。さすがのキースも、偉大なるバッハに敬意を払い自粛したのか、それとも単にいつものようにノレなかったのか、それは知らない。でもそれは正解だ。ゴルトベルク変奏曲であんな奇声を入れられたら、そりゃもう興醒めだろう。もっともグールドは(小さな声で)歌ってるけどな。あれはまた別物だから。
というわけで、お買い得感のある名盤でございました。