野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

Tough ain't enough

昨日は快晴でえらく暑かったなあと思ったら、今日は一転して雨が降り、しかもやたら寒い。どないせえっちゅうねんという感じだが、この季節はまあ、ある程度は仕方ないですな。ある程度はね。
寒い寒いと文句を言いながらも、昼間はあちこちほっつき歩き、結局それなりに落ち着くのは夜になってからだ。たまった映画を消化せねば、ということで「ミリオンダラー・ベイビー」を観た。

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]


いやーこれは… ひどい話ですな。何というか、救いがありません。クリント・イーストウッドモーガン・フリーマンも渋いけど。マギー役のヒラリー・スワンクのギラギラぶりもすごい。それにしてもやっぱりボクシングって、野蛮ですなあ。
後で気づいたのだけど、同じクリント・イーストウッド監督・主演の「グラン・トリノ」とこの映画は、実はとてもよく似た物語なんじゃないだろうか。まるで神話のような対称性がある。イーストウッド扮する頑固な老人は、過去のあるできごとに対する鬱屈を何十年も抱えており、実の家族とはあまりうまく行っていない。「グラン・トリノ」では妻の死後、牧師の再三の誘いにもかかわらず頑として教会には行かない。「ミリオンダラー・ベイビー」では毎日教会に通うが、妙な宗教問答を牧師にしかけては疎んじられている。いずれにしても、「宗教では救いにならない」と言っているように思える。自分に「弟子入り」を志願する若者たちを拒絶しながらも、最終的には受け入れ、育てる。でもそれはいずれ、ちょっとした手違いにより、取り返しのつかないかたちで損なわれる。損なわれてしまったもの対する落とし前の付け方は… 誰かの命を犠牲として差し出さなければいけないのか。まああまり書きすぎるとアレなので、この辺で。