野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

勝手にヤバいシリーズ

昔の洋楽の邦題ってのはすごく工夫してつけられていたけど、最近は全然だね、なんてことを言う人がいる。確かに、例えば"I want to hold your hand"を「抱きしめたい」にするなんていうのは、なかなか考えたな、と思うし最近は元のタイトルをそのまま英語読みにしただけ、てのが多い気もする。でもそのへんはまあ時代ですよ。英語タイトルに抵抗が無くなってきてるということだろう。
けれども出版界では、まだ結構タイトルの付け方はあれこれと工夫をしていると思う。なかでも感心したのが、「ヤバい経済学」、原題は"Freakonomics"だ。これ原題もなかなかのものだと思うが、邦題も秀逸だ。で、その第2弾、「ヤバい経営学」。いや、他にも「ヤバい社会学」というのもあるから実は第2弾ではないかも。というかそもそも著者が違うから。勝手に「ヤバい」シリーズをでっち上げた東洋経済、大したもんだな。

ヤバい経営学: 世界のビジネスで行われている不都合な真実

ヤバい経営学: 世界のビジネスで行われている不都合な真実


この原題は"Business Exposed"、副題は"The Naked Truth about What Really Goes on in the World of Business"、日本語で「世界のビジネスで行われている不都合な真実」となっている。内容はそのままだ。いわゆるところの「ビジネス」というものに関して常識とされていることや一般的に信じられていることに関して、アカデミックな研究成果をもとに真実を暴く。そう、あとがきにあるように、「王様は裸だ」と叫ぶわけだ。
M&Aのほとんどは失敗する(買収金額は過大である)、経営合理化は中期的にみれば効果が無い、TQM、ISO9000やシックスシグマなどの経営施策は企業の体力を奪い、効率性を阻害する、などなど。
読んでいて気が付いた。これは、先日読んだ「世界の経営学者はいま何を考えているのか」と同じような内容だ。あれも最新の経営学の研究成果を紹介しているのだから当然と言えば当然なのだけど。「世界の…」は、あまり一般的には理解されていない経営学というのは一体いかなる学問で、どのような手法でどういった研究をしているのか、ということを説明するのが主旨だが、「ヤバい」はなんというか、もっと下世話(というと言い過ぎだが)なノリだからそのへんはまったくトーンが違う。ハーバード・ビジネス・レビューと週刊新潮の違い、というとこれもまた言い過ぎかな。とにかくこの著者フリーク・ヴァーミューレン氏がロンドン・ビジネススクールの名物教授というのもよくわかる気がする。そのうちNHKの「白熱教室」なんかでやったりするんじゃなかろうか。