野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

まるで喜劇じゃないの

罪と罰』の下巻を読み終わった。疲れた。

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

この小説の登場人物に、マトモなやつは一人もいないな。みんなどこか言動がおかしい。一人残らずだ。

この下巻ではいよいよスヴィドリガイロフが登場し、ラスコーリニコフと対面する。

≪この男は気ちがいだ≫とラスコーリニコフは思った(p.21)

いやいや、お前が言うなよロージャ。

そのロージャ(ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ)がどうも怪しい、つまり金貸しの老婆を殺した犯人なんじゃないかと疑う予審判事ポルフィーリイとの会話は、刑事コロンボ的な息詰まる心理戦という感じで、いわばこの小説の見どころのはず。なのだが、とにかく無駄に喋りが長く(別にポルフィーリイに限った話ではないが)、おまけに台詞のあちこちでやたらと「へ、へ、へ、へ!」なんて笑ってて、おまえ普通に喋られへんのか、とイライラするためなかなか会話そのものに集中できない。以前に読んだときにはたぶんこのあたりを面白く読んだのだと思うのだけど…

ソーニャの父親マルメラードフが馬車に轢かれて死に、その葬儀の後の法事の様子が、何だかもうわけわからなくて面白い。
タダ飯が食えるってだけで見たこともないやつらがゾロゾロ集まってきたり、誰かがコサックダンスを踊っていたり、喪主のカテリーナ・イワーノヴナがアパートの大家アマリヤ・イワーノヴナと口論を始め、それが乱闘騒ぎに発展したり、金持ってるけどケチで小物のピョートル・ペトローヴィチ・ルージンがやってきてソーニャに「お前さっきオレんとこから100ルーブリをパクっていっただろ」とイチャモンつけに来たり、「それはルージンがソーニャをハメようとしてこそっとポケットに突っ込んだんやんけ」とレベジャートニコフに暴露されたり、挙げ句の果てにカテリーナ・イワーノヴナは発狂してしまいフライパンを叩いて子供たちを踊らせて物乞いをする、てな感じでそりゃもう無茶苦茶だ。

…『罪と罰』ってこんな話だったかな?