野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

Googleの世界征服

コンタクトを外して、レンズを洗おうと手に取ったのは、洗浄液ではなくてイソジンだった。危ない危ない。



グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)」は面白い本だった。
主旨としては、この前読んだ「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)」とだいたい同じだ。この本では特にGoogleにフォーカスして、インターネットがどのように進化してきたか、これからどこへ行くのか、を論じている。
グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501)

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)


前半では、「ロングテール」が一体何なのか、どんな意味を持つのか、について実際の中小企業が再生して行った例でわかり易く説明している。この辺まではまあ「ウェブ進化論」とだいたい同じ。だけど後半の「アテンション」という概念について説明してるあたりはちょっと目新しかった。(個人的には、だけど。ひょっとすると世間ではもう常識なのかもしれない。)つまり、今や最大の価値基準は、持っているカネや生産高ではなく「どれだけ注目(アテンション)されるか」である、というわけだ。
世界のWebページはトータルで数十億ページにもなり、それでもなおその数は日々増えて行っている。一方では地球上の人間の数、そして彼・彼女らが読む事の出来る情報量は一定(実際には人口は増えて行ってるわけだが、Webページの増加量からみれば一定であると看做して差し支えないだろう)なのだから、いかにしてそこに情報を届けるか、逆に言えば発信したい情報に注目してもらえるか、が非常に重要になってきているということだ。数多ある情報に対してフィルタをかける、「引き算」をして必要な情報を得られるようにするのが検索エンジンの基本的だが消極的な使い方だろう。これを一歩すすめて、より有用と思われる情報を検索結果の上位に持ってくることでアテンションを誘導し、コントロールするのが、いわば「足し算」としての検索エンジンの積極的な使い方だ。Googleは独自の強力な検索エンジンを世界中に無料で提供することにより、人々のアテンションをコントロールし得る力を手にして、天下を獲ろうとしている。
Googleがスゴいのはよくわかった。ここでこの本はさらに問いかける。「本当にそれで大丈夫なのか」ネット上の世界を征服できるだけの強大な権力を持ってしまったGoogle、しかし彼らにそれだけの覚悟が本当にあるのか。それは無いのではないか、と著者は書いている。Googleってこんなにスゴいんだよ、の単なるGoogleマンセー本ではなく、彼らのダークサイドについてもきちんと書いてるのがこの本の面白いところだと思う。なかなか読み応えあり。