野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

Scrumの祖父が語る

野中郁次郎先生の最新作、「イノベーションの知恵」を読んだ。
以前読んだ「イノベーションの作法」、その他イノベーションのなんとかシリーズとだいたい同じような、事例集とその解説だ。といってしまうとなんだかつまらん本のようだが、決してそんなことはない。

イノベーションの知恵

イノベーションの知恵


けど、ちょっと引っかかりがなさ過ぎたかも。あまりにするするっと読んでしまった。

  • 「理論的三段論法」ではなく「実践的三段論法」を身につける
  • 「モノ的発想」から「コト的発想」へ転換する
  • 「考えて動く」ではなく「動きながら考え抜く」
  • 「名詞」ベースではなく「動詞」ベースで発想する

などなど、表現は違うが他の本で書かれていることと、そう大きくは違わないという気はする(大きく違うようだとそれはそれで問題だ)。うーんでも正直、前の「イノベーションの作法」の時のほうがもっとこう、しっくり来る感じがあったような気がするなー。
最後の「まとめ」の章が一番エキサイティングだったと思う。『「身体性の復権」を目指して〜「場のマネジメント」のあり方を探る」というタイトルなのだけど、この「身体性」っていう問題は、前から結構気になってるのよなあ。そこでメルロ=ポンティを持ち出されるとつらいけど。でも必要なら読んでみるのもやぶさかでは無い。うーむ。
p.290ではなんとScrumについて触れられている。野中先生とまったく縁のなかったソフトウェア開発の話だ。だけど確かに、アジャイルソフトウェア開発は「身体性」との関係が深い気がするのよな。
それにしても

著者の野中はあるソフトウェア開発会社の経営者の訪問を受け、「自分たちのワークショップに参加してほしい」と要請されたことがありました。

とあるが、「あるソフトウェア会社の経営者」って平鍋さんのことじゃないか。他の事例紹介では実名出しまくってるんだから、ここでも実名で書けば良いのに。変なの。
しかしメルロ=ポンティかぁ。参ったなこりゃ。