野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

良く読むとこれまた鬼畜の人でなし

何を思ったか、「好色一代男」に手を出してしまった。それも岩波文庫の原書に。無理矢理に十数ページほど読んではみたものの、ほとんど意味が取れずあえなく断念。仕方がないので、適当な現代語訳を探してみることにした。
そしたらあるじゃないですか、中公文庫で吉行淳之介訳ってのが。なのでまずはそれを読んでみることにしたのだが、いやーそれでもかなり手強い。手強いけれどもなんとか意味は取れなくもない。という感じでなんとか最後まで読み通すことは出来た。

好色一代男 (中公文庫)

好色一代男 (中公文庫)


とりあえず、原文を読もうとしたのはやはりずいぶんと無謀な試みだったようだ。どうやらこの「好色一代男」というのは、古典の中でも相当に難解なほうのテクストらしい。句読点の打ち方が変、というだけではなくかなり記述にあいまいな部分が見受けられるし、背景として要求される知識も多い。
どうもわかりにくいけど、でも特に前半部分は荒唐無稽で面白い。放蕩が過ぎて親に勘当され、全国各地を適当な仕事しながらさまよって、でも漁色活動には余念がない、という世之介。この「適当な仕事」ってのが本当に適当で、うどん屋とか魚屋ぐらいはまだ良いとしても、しまいには山伏とか僧侶とか、おいおい何でもありかよという感じなんである。
でこの物語本体もさることながら、「訳者覚え書」と「世之介とは何者(覚え書補遺)」がこれまた秀逸。特に、訳者吉行氏が病床に臥せりながら妄想した「巻六は西鶴が書いたのではない説」など、ほとんど謎解きである。というかやはり、もとが随分と謎の多いテクストなんですな。そんなものに手を出そうってのがそもそもの間違いなわけだ。百年早かったね。いやあ参りました。