野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

マロイの出番は意外と少ない

「さよなら、愛しい人」が文庫化されている。
言わずとしれた、あのチャンドラーの「さらば愛しき女よ」の村上春樹バージョンだ。

さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


「訳者あとがき」で村上さんはこう書いている。

チャンドラーの小説のある人生と、チャンドラーの小説のない人生とでは、確実にいろんなものごとが変わってくるはずだ。そう思いませんか?

こういうのを「殺し文句」っていうんですよ。参ったねぇ。一歩間違うと「551のある時…」みたいだけどね。
さて、この本、今まで日本で広く普及していた清水訳の「さらば愛しき女よ」を3年ほど前に読み、「20年ほど前に読んだはずだけど、ぜーんぜん内容を憶えてない!」とホザいているのだが、驚いたことに今回もやはり、内容をほとんど記憶していないということが明らかになった。
いや正確には、あの独特な 言い回し、「水道工夫のハンカチの味がした」みたいなディテールはぼちぼち憶えていたりするのだけど、ストーリーがさっぱりだ。最後の100ページぐらいで、「なんと、そういうことだったとわっ!」と驚きながら読んでいるのだから、つくづくおめでたい話ではある。まあ良いじゃないか、何度読んでも新鮮ってことでね。
それに今回は、なんとマーロウ君も「やれやれ」と言ったりするのだから。それだけでもけっこう値打ちモンじゃないですか!?なんかよくわからんけど。
とりあえず、マーロウ君みたいに次から次へと人をイラっとさせるような皮肉をぽんぽん連発できたら、そりゃあ楽しいだろうなあ、と思う。実際にはマーロウ君、それがもとであらぬトラブルに巻き込まれたりわけのわからん連中にボコられたりするわけだが。
ま、口は災いの元、ってやつですよ。