野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

ときのあとさき

mama!milk法然院でライブをやる。しかも土曜日。
などと聞いたら、そりゃもうなんとかして行きますよあなた。前日に上海にいたとしてもね。台風で飛行機が飛ばなかったらどうしよう、とどんだけヒヤヒヤもんだったか。
それでも台風はやっぱり近くを通過中なわけで天気はかなり荒れ模様。いったいどんなことになるのやら、と少々心配しながら法然院へ行ったのであった。
法然院の方丈から見える庭はとても美しい。折からの雨に濡れ、緑がさらに映えている。これから演奏が行われるであろう縁側に、コントラバスとアコーディオンが放置されている様は、それだけで絵になる。
さてmama!milkのお二人が登場である。庭をバックにして、日没前の薄明かりで逆光の状態になっている様子もまたおかし、である。
蝉が鳴いている。時折吹いてくる風で樹がざわざわと音を立てる。これらの音は彼らの演奏と一体になっていて、急に雨が降り出すのも、すでにプログラムされている演出であるかのように思えてしまう。
前半の部が終わり、20分ほどの休憩。すっかり日は暮れており、方丈に吹き込む風は肌寒いほになっている。
後半の部では照明が入る。庭を真っ暗にしたり、ライトアップしてみたり。もはや演奏の重要なパートになっているバックグラウンドノイズは、虫の鳴き声に代わっている。遠くで犬が鳴いている。そしてときどき強く雨が降る。
彼らの出す音は、こちらを陶然とさせながら、同時にそのタイム感、音の空白が異様な緊迫感を作り出す。ゆっくりくつろげそうな音を出しながら、緊張を強いる。まさにダブル・バインド=二重拘束、禅の世界だ。
という感じで、いやもうヴィジュアル的にも音響的にも、満喫してまいりましたです。