9・11テロが起こったとき、サミュエル・ハンティントンというアメリカの政治学者が書いた「文明の衝突」という本が注目されたらしい。そこに書かれている「西ヨーロッパ文明」と「イスラム文明」の衝突という図式で9・11テロが解釈されたのだとか。
社会学者の大澤真幸氏は、この解釈に反対の立場を取る。では、それに代わる、より説得力のある世界の描像とはいかなるものか?というのが「文明の内なる衝突」という本のお題だ。
文明の内なる衝突---9.11、そして3.11へ (河出文庫)
- 作者: 大澤真幸
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/08/05
- メディア: 文庫
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イスラム文明も西ヨーロッパ文明も、異なる文明間の衝突・対立に相当する亀裂を実際には抱えている。このまさに「文明の内なる衝突」が、9・11テロを理解するための世界の描像となり得るのではないか、というわけだ。9・11テロだけではない、ナチスドイツのホロコーストだってそれで説明できる、と。
そう言われると、なるほどそんな気もしてくる。でも、いややっぱりこれはイスラム文明と西ヨーロッパ文明の、あるいは資本主義と原理主義の衝突なのだ!と強く主張されたら、ああそうですよね、と説得されてしまうかもしれない。まあ要するに腹に落ちるところまで理解できていないということなのだけど、筆者も書いているように、「文明の衝突」という構図が粗雑ではあるがわかりやすいということでもあろう。中盤の「原理主義的転回」の章では、フーコーの生権力(bio-pouvoir)まで動員してきて、そろそろ話についていけなくなる。しかし、なんだか理解できないなりにも、逆説に満ちた論理の展開はスリリングで面白い。
結局、「わかりやすい話」ってのはちょっと疑ってかかったほうが良いぜ、ってことかな。というあたりの理解で落ち着いたわけだ。