「アマルフィ」が待望の文庫化である。
- 作者: 真保裕一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/01/16
- メディア: 文庫
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母親とイタリア観光中の日本人少女が誘拐された。身代金の引き渡しと少女の救出のために、外交官の黒田康作は、母親とともにアマルフィへ向かう、という話。
黒田くんは本来、イタリアを訪問する外務大臣の警護、という特命を帯びてアテネからローマまでやってきたわけだ。で、この突発的に起こった誘拐事件に対して、大使館としてはできるだけ面倒なことには関わらんとこうという立場なのだけど、そこをあえて外務大臣なんかは放ったらかしで、上司の命令も無視して誘拐された子どもの救出に向かうわけですな。邦人の保護こそが領事の仕事である!なんて言ってね。こんなの、役人としては全然ダメで、絶対に出世なんてできるわけがない。そういう、一文の得にもならんことを一所懸命やるんですな。解説にも書いてあるのだけど、これがまさに「やせ我慢の美学」というやつですよ。ハードボイルドですなあ。ここまで無茶なことはやってないと思うけど、佐藤優さんが外務省時代にソ連で分析官の仕事をやってた時の話なんかを読むと、ちょっと近いものを感じますな。
文章も非常にゴツゴツした手触りのハードな感じで、昨今の表紙に萌え系イラストがあるようなヌルめの小説(どれとは言わんが)なんかからするとかなり良い。
難点は、読んでて頭に思い浮かぶ主人公黒田が織田裕二になってしまうことだな。まあいずれ映画の方も観るですよ。