もはや古典となっていてかなり有名な「失敗の本質」。「超入門」なんて解説書まで出てくるぐらいだからけっこう難しいのかもしれない。でもまあ、まずはやっぱり原典にトライしてみるか、なんと言っても古典だしな。というわけで手に取ってみたわけだ。
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08
- メディア: 文庫
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ノモンハン事件から始まり、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、そして沖縄戦、と、太平洋戦争においてクリティカルなポイントとなった戦いについての詳細な紹介と分析を「失敗の事例研究」として前半部分に配置されている。これがかなりヘヴィなのだな。軍事ヲタとかある種の人々にとっては、これがまたたまらん、のかもしれんが少なくともわたくしにとっては、正直なところちょっと退屈なのだ。それでも第二章「失敗の本質」、そして第三章「失敗の教訓」はなるほど確かに名著といわれるだけのことはある、という感じで、できればここから始めてもらえればありがたいのだが、と思わんでも無い。しかしまあ、やはり事前の知識として第一章の「失敗の事例研究」は必要なのだろうな。
その辺を我慢しながら読んでいると、現実の例えばプロジェクトマネジメントにおいて、自分自身の状況認識のしかたや行動について考えたりして、なんだか人ごとではないなと感じずにはいられないところもあり、ますます辛い。
おお、と思ったのは組織において「学習」(Learning)と同じぐらいに重要なのが「学習棄却」(Unlearning)である、ということだな。環境に適応しすぎると、環境の変化に対して脆弱になる。「適応は適応能力を締め出す(adaptation precludes adaptability)」のだ、と。考えてみれば、これは「イノベーションのジレンマ」で言っていることと同じだわな。クリステンセンより数十年前からその辺を喝破していたのだから、こりゃなかなか大した本ですな。