「鴨川ホルモー」も「鹿男あをによし」もかなり面白かったけど、「プリンセス・トヨトミ」はちょっと微妙だったな、などと思いながら、なんとなく手をつけかねていた借り物の「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」、やっとのことで読んでみた。
- 作者: 万城目学
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2013/01/25
- メディア: 文庫
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なんともキュートで、ちょっと悲しくも微笑ましい。良いではないですか。ホルモーや鹿男の馬鹿パワーは無いけども。でも共通してあるのは、異界とのインターフェイスよね。かのこちゃんの名前を、「鹿に勧められてつけた」というお父さん(「鹿男あをによし」との関連を暗示させる)。そして、飼い犬の玄三郎とその妻である(?!)猫のマドレーヌ夫人、と話ができるかのこちゃん。いや正確に言うとかのこちゃんは犬や猫と会話ができるわけではない。しかしマドレーヌ夫人と玄三郎は、互いに会話ができるし、人間の言葉も理解する。そして、かのこちゃんは彼らの感じていることが、なんとなくわかる。小学1年生の元気な女の子、かのこちゃんはトリックスターなのだ。解説にも書かれているが、成長するというのは、何かを失いながら別の何かを手に入れること。そうやってかのこちゃんが成長するさまを、切なく、かつ微笑ましく感じながら読むわけですよ。特にかのこちゃんの「フンケーの友」、すずちゃんとの「大人のお茶会」なんかキュートで。
マドレーヌ夫人の誇り高くノーブルなキャラクター、そして、彼女の人間界を見る、どこかシニカルな視線には「吾輩は猫である」を彷彿とさせるものがある。「吾輩」ファンにとっては、その本歌取り的に読むのもまた楽しい。
荒唐無稽なのに、しみじみと良い話でございました。