野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

百舌からペガサスへ

MOZUシリーズ原作の第3弾、「砕かれた鍵」。

なんて言ったって、実際のところ百舌なんてちーとも出てこないんですけど。前作の「幻の翼」で陵徳会病院の一件についてはとりあえず一段落しており、倉木、大杉、明星という主要な登場人物が同じという以外、まったく別の話になっている。
だからまあ、ドラマの原作を読んでおきたいというだけのことであれば、「幻の翼」までで十分(そもそもドラマのMOZUシーズン2じたいが原作の「幻の翼」をほとんど無視しているのだけど)なのだけど、せっかく表紙が真木ようこの写真になってるし、てことでついでに。
相変わらず倉木って性格悪いな。公安から今度は警察官の不祥事を取り締まる特別監察官になっている。そして大杉は、刑事を辞めて私立探偵になっている。実はかねてから、大杉のセリフっていうのはどうもフィリップ・マーロウ君っぽいなと思っていたのだ。口の悪いところとか。で、今回はもう、完全にマーロウ気取りになっていて、いい感じだ。大杉を尾行していた男を捕まえて問い詰める、以下のような場面がある。

桜田書房の社員というわけでもなさそうだな。尾行のやり方が素人には見えん。私立探偵か」
「さあ、どうですかね。退職した刑事かもしれませんよ」
「刑事って柄か。野原で蝶々を追っかけるのがせいぜいだろう」
(p.142)

さらば愛しき女よ」(清水訳のほうね)で、刑務所から出てきたばかりで「この八年間、俺はどこにいたと思う?」と問う大鹿マロイに対してマーロウが「蝶々を捕まえていたのかね?」と答える、あのシーンを思い出した。
原作のシリーズはまだ続く。今回は出てこなかった百舌が次作では復活するらしい。やっぱり読んどくかなぁ。