映画化されるというので、最近よく書店で「紙の月」が平積みになっているのを見かける。どんな話なのかはまったく知らなかったが、どうも気になるのでとりあえず読んでみた。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2014/09/13
- メディア: 文庫
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よくある話、という気もするし、そんなバカな話があってたまるか、とも思う。読んでてひりひりするこの感じは、いったい何なのか。カネの恐ろしさ、みたいな安直なことで片付けたくない。
人は私欲のためにできることなんてたかが知れているけど、他の誰かのためには結構がんばれる。そして、「正義のため」には、相当に邪悪なこともできる。
麻の種を植えて、その上を毎日跳び越えるという忍者の修行のように、ほんの小さなことの積み重ねが、「不正」に対する心理的なハードルを下げて行く。ささいなことの繰り返しが、いつしか制御不能な連鎖反応を引き起こし、巨大なアウトカムにつながる。そのプロセスを見ていると、なんともいたたまれない気持ちにさせられる。
ラカンの「人間の欲望は他者の欲望である」というのは、ひょっとしてこういうことなのかもしれない、と思った。ちょっと違いますか。