- 作者: 池井戸潤
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/09/02
- メディア: 文庫
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前2作のネタは債権回収だったのが、今度は企業買収になり、また、半沢ら「バブル世代」だけでなく鬱屈をかかえた「ロスジェネ世代」の部下たちまで登場人物に加わり、話はよりスケールが大きく、また複雑になっている。
10年ほど前に世間を騒がせた、ライブドアとか村上ファンドによる買収の事案、当時は解説されてももひとつピンとこなかったポイズンピルとかホワイトナイトとか、あーなるほどこういうことなのね、と妙に納得したり。
まあそれにしても相変わらず「ワルもん」と「エエもん」(もっと正確に言えばさらに、「エエもん」側に転ぶ、根性のない「ワルもん」)がはっきり分かれていて、現実にはそんなんちゃうやろと思いながらも、やっぱり面白い。企業買収(のなかでも特に、敵対的買収)の裏で暗躍する連中を見てると、まるでヤクザだなと思うがまさに、半沢いわく「世間的には紳士面をしてみせるが、銀行の実態はヤクザと大して変わらない」(pp.157-158)とか。元銀行員である池井戸さんがそう半沢に言わせているのだから、うーむやはりそうなのかと思ったり。
このシリーズ(だけじゃないけど)でよく出てくるのが、「銀行員の最大の関心事は人事である」ということ。それだけに半沢の「人事が怖くてサラリーマンが務まるか」(p.319)というセリフは痛快なわけですね。
他にも半沢はいろいろ言っているのだけど、これ以上いくと説教くさくなる寸前のところで止めてるのもまた絶妙かと。いやなかなか大したもんです。というわけで、次の「銀翼のイカロス」の文庫化を心待ちにしておりますです。