今朝はまた寒いなぁなんて思いながら雨の降る中を出勤していたら、だんだんと雨が雪に変わり始めた。オフィスに着いたころにはすっかり雪。
レドモンドの雪は初めてだ。シアトル地域でもまったく雪が降らないわけではないが、決して多くはない。そういえば昨年は11月後半からビザ取得のために日本に帰って、その足でミュンヘンへ行き、さんざんシュニッツェルとヴァイスビアを貪ってこちらに戻って来たのは12月の9日。わたくしが留守にしていた間に雪が降った、と聞いた。
けっこうな勢いで降っていたので、積もったり凍ったりしたらイヤだな、と心配したが午前中のうちに雪はやみ、ほんのり積もっていた雪は夕方までにすべて融けた。帰りぎわに車のフロントグラスが凍っていたのでちょっと難儀したが、まあ何度かウォッシャー液を出してワイパーかければ消えるぐらい。まあそんなもんだ。
ところで。
わたくしただいま米国駐在中で、給料は所定のルールに則って一部がドル建てで、残りが日本円で支払われている。生活の拠点は米国なのでもちろん給与の金額もそちらの方が大きい。かといって日本の住居はまだ残っているわけだし、それなりの費用も発生する。その状況に対して、会社の規定による給与支払いのドル建て・円建て比率は必ずしも適切なものであるとは言えない。より具体的に申し上げるならば、ドルの額はこちらで地味に暮らす分には十分以上であるが、日本円が何かと不足しがちである。したがって、当地の銀行口座に保有するドルの一部を日本円に変えて日本で保有している銀行口座に入金する必要がある。もちろん今のこの世の中であるから、それはそんなに難しい話ではない。銀行の窓口へ行って用紙に必要事項を記入して数日待てば良いのだ。別にロケット飛ばすわけじゃないんだ。しかしこれ、大抵のことはオンラインバンキングでできるのにわざわざ銀行まで行かねばならん、というのもちょっとジャマくさいじゃないか。と思っていたら、TransferWiseという画期的な送金サービスがあることを知った。
画期的とは言っても、実はこの手法はイスラムでは伝統的な送金方法であるらしい。イスラムの人々は送金するのに銀行を使わない。たとえばムスタファ(仮名)が遠く離れたところにいるヒシャム(仮名)に金を送りたいとしよう。その場合ムスタファ(仮名)は自分がいる土地の、信用できる人アリ(仮名)に金を預けるのだ。アリ(仮名)は、送金相手ヒシャム(仮名)がいる土地のやはり信用できる人ハサン(仮名)に、ムスタファ(仮名)がヒシャム(仮名)に送金したいので、アリ(仮名)がムスタファ(仮名)から金を受け取った、と伝える。そうしたらハサン(仮名)がヒシャム(仮名)にその金額を支払ってくれる。この逆のパターンもあり、ハサン(仮名)の町内に住むフセイン(仮名)がアリ(仮名)の知り合いであるドゥル=ジャラール・ワル=イクラーム(仮名)に送金したい時には金の流れがこの逆になる。そして時々、アリ(仮名)とはハサン(仮名)は差額を清算するわけだ。書いていてだんだんとわけがわからなくなってきたが、この送金方法をハワラというのだそうだ。
ではこの方法を最新のICTを駆使して実現してやろう、というのがTransferWiseだ。自分の銀行口座からTransferWiseに入金する。入金額から手数料を引いた後に現地通貨に両替した金額を、送金先の国にあるTransferWiseの口座から送金先の口座に入金するわけだ。国をまたいだ金の動きには銀行がからんでいない。ちなみにわたくしが当地で口座を持っているUnion Bankから日本の銀行口座に送金しようと思ったら、手数料$40を取られる。一方でTransferWiseの手数料は送金額の8%弱だ。だから例えば$9,000を送金しようと思ったら、手数料は$72ほどになる。なんだTransferWise割高じゃないか、と一瞬思うが、例えば三井住友銀行にドルを日本円に両替して入金しようとした場合、実はその交換レートはその時のTTBレートより2円以上安い(円高)。ということは、$9,000を入金しようとしたら、TTBレートに対してなんと約18,000円の差額が発生する。これが隠れ手数料となっているわけだ。一方でTransferWiseの交換レートを見ると、TTBレートそのまま(よりちょっと高いぐらい?)なのだ。だから、最終的に送金先の口座に入る金額で比較すると、TransferWiseの方がはるかにお得、ということになる。
というわけで、こいつを試してみた。ハワラが信用の上に成り立っているように、こちらもTransferWiseを信用する必要があるが、まあそこさえクリアできれば、大変に使いやすいシステムだ。アカウントを作って、パスポートの写真をPDFで送って身元確認ができれば、それで使える。実際、日本の口座に送金してみたところ、数日後無事に入金されていた。まあ世の中にはすごいことを考える連中がおるもんですなあ。