第五巻。袁術を見限った孫策が、周瑜と合流した。これから先、孫策と周瑜の大活躍が語られるのかと思ったら、その辺はぼちぼちで、そうこうしているうちに孫策は殺されてしまって、あれ?
- 作者: 宮城谷昌光
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
袁紹の外貌は寛大そうであるが、内心ねたみをもち、人に事をまかせておきながら信用しない。また、鈍重で決断力に欠け、好機をみのがす欠点がある。さらに、軍の統率はゆるく、法令はあってなきがごとしで、たしかに士卒は衆いものの、かれらをすべて用いるのはむずかしい。袁紹は門閥によりかかり、従容として知者のふりをして、名声を集めている。それゆえ能力がとぼしいくせに問答好きの者が多く帰属している。(p.140)
いやもう、散々ですな。気の毒に。
あ、そういえば呂布。いくらリーサルウェポンだと言ったって、それなりの軍を率いて戦うてなことになれば、やはり頭脳というのが大事なわけで。馬鹿なら馬鹿なりにちゃんと軍師の献策を容れれば良いものを、高順や陳宮の言うことを聞かないもんだから結局は曹操に負けてしまうわけね。
一方で、だんだんと劉備が登場する場面も出てきて、少しずつ存在感を増しているわけだが、この本来なら三国志における主役級キャラが、何だか得体の知れない、つかみどころのない男、として描かれているのが面白い。これは劉備が、世間一般で広く共有されている儒教的な価値観とは距離を置き、多分に老荘思想に影響されているからではないか、と分析されている。いやそれにしても、やれ“昔から人の恩に報いたことがない人物”(p.273)だとか、“劉備の特技は、逃げ足の速さである”(p.316)などと、これまた散々な言われようだ。「徳の将軍」とか呼ばれてたんじゃなかったのかよ。
まあそんなこんなであれこれありつつも、この第五巻では呂布が死に、最終的に袁術も袁紹も病死、ということでキープレイヤーがだいぶ整理されてきた。これで、ややこしい話が少しはわかりやすくなってくれると良いのだけど。