『三国志』もついに第12巻、最終巻だ。
- 作者: 宮城谷昌光
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/04/10
- メディア: 文庫
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いやあ疲れた。しかし面白かった。長らく日本人にとっての『三国志』のスタンダードは吉川英治(または横山光輝のマンガ)だったのだろう。おそらくそれにぶつける新解釈として、北方謙三版がハードボイルド仕立てで提出された。しかしこれらはいずれも、かなり『三国志演義』より、すなわち史実よりも講談的エンタテインメント性を何よりも重視していたはず。これらに対するアンチテーゼが宮城谷三国志であり、とにかく史書に忠実に解釈していくとどうなるか、というのを追求した結果なのではないかと思う(少しばかり異端のポジショニングに酒見賢一の『泣き虫 弱虫 諸葛孔明』シリーズがある。わたくしはこちらも大好物だ)。もちろんこれは歴史書でなく小説である。すべてが史実ではない。ただし、できる限りの事実を収集し、欠けている部分は持てる想像力を駆使して補完するによって出来上がったのがこの物語なのだろうと思う。そしてその姿勢はとてつもなくストイックだ。
みえないものあるいはみえにくいものを視るのが小説家の想像の目であるとはいえ、その目によってみえたものが、史実の制御力を失った空想や妄誕であっては、真実の地平から遠ざかるばかりである。
(第7巻 pp.369-370)
そう、「史実の制御」のもとで、小説家の想像力をフルに発揮させて作り出されたこの小説が、面白くないわけがない。