『サトコとナダ』という漫画がある。ということをわりと最近知った。アメリカに留学したサトコがサウジアラビアから来たムスリムのナダとルームシェアする、という話だ。ムスリムに対して一般的な日本人が持っているステレオタイプなイメージに対して、実はまったく違っていたり、あるいはやっぱりその通りだったりする様々なイスラムの習慣・常識・ものの考え方を彼女らの日常を通して知ることができる。
この漫画は紙の本以外にも一部をWebで読むことができる。
わたくしも読んでみた。なかなか面白い。
そして、さらにこの漫画をフックにした、『『サトコとナダ』から考えるイスラム入門』、という本がある。昨年末ぐらいから読んでいたのだが、年が明けてから中東方面は大変なことになっている。
それだけなら『サトコとナダ』だけ読んどけば良い。その後の、イスラムの歴史と思想、システムについての解説、といったあたりがなかなか読み応えありなのだ。特に、ムハンマドの言行録ハディースの真偽の判定方法、なんてあたり。
イスラモフォビアの理由がヨーロッパとアメリカで異なる、というのもなかなか面白い。いわく、「過去に倒したはずの亡霊が生き返った」(ヨーロッパ)のか、「飼い犬に手を噛まれた」(アメリカ)の違い、と。なるほど。
さらにフランスの排外主義の原因は宗教の衰退と格差の拡大で、家族関係に関して自由主義的で核家族であるフランス中央部と、権威主義的で直系家族の周縁部に対して、それぞれ異なるメカニズムでもたらされた、ってエマニュエル・トッドは書いてたな。
アメリカのイスラモフォビアは911から、と思っていたが、さらにイランのアメリカ大使館人質事件まで遡るのだな。
あとは、世界に17.3億人いるというムスリムのうち最も人口が多いのはインドネシアで、それにパキスタン、インド、バングラデシュ、エジプト、ナイジェリアと続いて、その次にやっとイランが出てくる、というのは意外だった。イスラムといえば中東、と連想してしまうがアフリカも結構多い。そういえば10年ほど前の『神々と男たち』という映画にイスラム過激派が登場するが、あの舞台はアルジェリアだった。んなところにイスラム過激派がいるのかよ、とか、アルジェリアって雪が降るのかよ太陽が黄色いんじゃないのかよ、とかいろいろと意外に思ったものだ。あれはフランスから派遣された修道士たちの話で、劇中でもキリスト教とイスラム教はルーツが同じで、兄弟みたいなもんだぜ、みたいなことを言ってたような気がするな。
まあそんなことはとにかく、世界の人口74億のうち17億以上、ざっくり1/4近くはムスリムなんだから、やはり彼らと何かしら折り合いをつけながら暮らしていく必要があるわけで、そのためにはもう少し、思い込みをいったん取っ払い、そして少しばかり想像力を働かしてお付き合いするのが良いんでないの、てことよね。それって別にムスリムに対してだけではないと思うけどね。