野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

みんな仲良くしよう

こんな天気の良い日に屋内にこもってるのもどうかな、とも思ったのだけど。
とある人からオススメされて、かねてから懸案となっていた映画「神々と男たち」を観に行った。
上映館は梅田ガーデンシネマ。ここの映画館は初めてだ。
アルジェリアの山間の村でつつましく暮らすカトリック系の修道士たちが、イスラム過激派の武装集団に誘拐される、という実際にあった事件をもとにしたストーリー。
当時アルジェリアは、クーデターにより政権を掌握した政府軍と武装イスラム集団との間で内戦状態にあった。外国人を狙ったテロ活動が激化していくなかで、フランス内務省からは安全のために帰国命令も出ている。生きていくために去るのか、それとも信念にしたがって居残り続けるのか、と悩み続けるが、最終的には全員が村にとどまると決心する。そしてついに武装イスラム集団が襲撃してきて、彼らを拉し去る… と大雑把に言ってしまえばそんな感じ。
とりあえず、アルジェリアの美しい景色が印象的。しかしアルジェリアと言えばおもわずムルソー君もアラビア人を射殺してしまう黄色い太陽、と思っていたのだが、なんと雪が降ったりするというのが意外だ。
修道士たちが覚悟を決め、村に残ることでみんなの意見が一致した後の、言ってみれば「最後の晩餐」のシーンがクライマックスかもしれない。普段つつましく禁欲的に暮らす彼らが、みんなで葡萄酒を飲みながら食事をする。一人ひとりの顔をアップで写すのだが、この表情が、彼らがBGMとして流す「白鳥の湖」とあわせて、もうなんとも言えない。
それにしても、みんなそれぞれの事情がありながらも、最終的には村に残ることを決心させたのは、信仰というよりも義理・人情だという感じがするのだがどうだろう。キリスト教とイスラム教という、お互いに相容れないはずの一神教に帰依するもの同士、つまり修道士と村の人々がそれぞれにリスペクトを持ちながら一緒に暮らしてきたのにいまさら逃げ出すわけにはいかんでしょ、ということだと思うのだけど。所詮は世俗の人間には理解できない感覚なのだろうか。