野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

そういわれると結構ふしぎかもね

『神々と男たち』という映画があった。アルジェリアの山間の村でつつましく暮らすカトリック系の修道士たちが、イスラム過激派の武装集団に誘拐される、という、実際にあった事件をもとにしたストーリーだ。

あの中で、キリスト教イスラム教もルーツは一緒で、兄弟みたいなもんだ、てなことを言っていたような気がする。
そう、キリスト教イスラム教、それぞれの文明の対立、みたいなことが語られることが多いけど、それらの差は、一神教多神教の違いからするとそんなに大きくない、ということらしい。
まあ確かにね。一神教の思想って、まあ言ってることはわかるんだけど、やっぱり根本的なところが理解できないと感じる。ああいうのって、地続きで囲まれた外敵の脅威に常にさらされてきた人々のもので、周囲から隔絶され守られた島国に暮らす民族にはどうしたって理解できない何かがあるのだろう、と想像する。
では、ユダヤ教から始まり、イスラム教、キリスト教に分化していった一神教の中で、それぞれがどのように違うのか。
というのを大澤真幸氏と橋爪大三郎氏の対談形式で読み解いていくのが『ふしぎなキリスト教』という本だ。

これがなかなか面白い。キリスト教に詳しい橋爪氏に、大澤氏がいろいろと素朴な疑問・質問をぶつけていく、という体なのだが、いやなかなかどうして、大澤せんせも聖書をはじめとして、いろんな文献や資料など読み込んでらっしゃいますよね、というのが感じられる。
「素朴な疑問」は時になかなかバチ当たりなものだったりするが、それはやはり聖書の記述などに対してわたくしも抱く、素人の素朴な疑問であり、また意外と核心に迫るものであったりもする。
キリスト教は宗教の体系として、ユダヤ教イスラム教に比べると完成度が低い、というのもなかなか面白い。だからこそ逆に、融通がきくというかエエ加減な運用が可能になり、広く受け入れられるようになった、とか。
この二人の組み合わせ、他にも仏教とかウクライナとかアメリカとか中国とか、まあいろんなテーマについての共著がある。その辺も読んでみたいところ。