伊坂幸太郎の「殺し屋シリーズ」最新作『AX』。やっと読んだ。
シリーズとは言っても、ところどころで『グラスホッパー』や『マリアビートル』の登場人物やエピソードについてちらっと参照されるぐらいで、ストーリーに連続性や直接の関係はない。
主役は「兜」。相当に腕の立つ殺し屋だが、極度の恐妻家でもある。
クールかつプロフェッショナルに「仕事」をこなす一方で、家では妻の言動に対してその裏の意味を必死に読み取ろうとしつつ神経をすり減らす様子のギャップがたまらない。
いや、これはギャップではないのかもしれないな。
具体的には述べられないが、兜がずいぶんと特殊というか過酷な環境で育ってきたということが示唆されている。それ故に対人関係において普通の人のもつ感情をうまく理解できない部分があるということが、「仕事」にも妻との関係にも影響している気がする。
というようなあたり、ちょっと今までのシリーズとは違うテイストになっているかなとは思いつつも、細々とした伏線の仕込みと鮮やかな回収ぶりは相変わらずで、見事と言うしかない。いやー面白かった。
