お、『営繕かるかや怪異譚』の続編が出ていたのだな。文庫になるまで気付かなかった。
ということで早速買い求めて。
主役は、それぞれの短編ごとに変わる、と見たほうが自然かもしれない。主役というより、様々な怪奇現象を体験する主体であり、ストーリーが語られる視点の人物だ。
それらの人物、「芙蓉忌」の貴樹の覇気の無さや「まつとし聞かば」の俊弘の優柔不断さ、「水の声」の弘也の屈託が、作品全体に独特の辛気臭さを与え、湿度を上げている。
最近は古い町屋を改装したカフェ、なんてものがもてはやされたりもする。しかし、古い建物や街ってのは、やっぱりあれこれと障りがあるということなのだ。改装だって、古いものに対しては上手いことやらないと具合が悪い。それを上手いことやるプロが営繕屋の尾端、というわけだ。
尾端は営繕屋であって霊能者ではない。建物やら道具の手入れ、修繕をやるだけだ。しかし、それで大抵の問題は解決する。「芙蓉忌」の問題は拗れたように思えるけども…
「魂やどりて」や「水の声」、「まさくに」などは不具合の原因と解決策がわりとはっきりしており、わかりやすい。一方で「芙蓉忌」や「まつとし聞かば」などは、いったい何が起こっているのか、それが何を意味するのかについては、結局明らかにはされない。でも、それがより怖さを増している。どちらもそれなりの面白さがあると思う。
そんなわけで、不思議な味わいの本だった。