「帝国の時代をどう生きるか」などという仰々しいタイトルにつられて、つい手にとってしまった。
帝国の時代をどう生きるか 知識を教養へ、教養を叡智へ (oneテーマ21)
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/04/10
- メディア: 新書
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21世紀、より正確には1991年のソ連崩壊より後になって、国際関係は帝国主義に回帰している。ただし、植民地や世界戦争と結びつくような、20世紀半ばまでの帝国主義とは異なる。自国の利益を主張しすぎて、相手国が激しく抵抗したり、国際社会から白い目で見られ、結果的に自国の状況が不利になると判断した場合には、妥協して国際協調に路線を転換する。維持のためにコストがかかれば植民地も手放す。こういう、よりリアリスティックで計算高い帝国主義を佐藤優氏は「新・帝国主義」と呼ぶ。日露関係もTPPも、この新・帝国主義の考え方で理解できるのだそうだ。
新・帝国主義国家を対象としてつかむには、「大きな物語」が必要となる。しかし80年代のポストモダニズム以降、「大きな物語」はどっかに行ってしまった。そこでマルクスの「資本論」を読み解くことで「大きな物語」を獲得できる。そんなわけでこの本の前半「理論編」は、宇野弘蔵による「資本論」解釈、宇野経済学批判である。これがまた難しいの。
「われわれが生きている現実の中で、断片的な知識を教養に、教養を新・帝国主義の時代に生き残るための叡智に転換するための手引き」にするには、相応の知識なり教養が要りますぜ、マサルちゃん。