野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

名盤にうまいものあり?

まるまる一週間かけて読んだ「クラシックCDの名盤」について。

いやもう、新書のくせにそんな時間がかかるほどにマッシヴな一冊だったわけですよ。450ページ超で、取り上げられた演奏家は100人にものぼる。当然、おびただしい数のCDが推薦・紹介されている。
その中のいくつかは聞いたことのあるものだ。
まず、シャルル・デュトワ指揮・モントリオール響によるドビュッシーの「夜想曲」、たぶんんこれのことだろう。
ドビュッシー:海/牧神の午後への前奏曲/夜想曲/遊戯

ドビュッシー:海/牧神の午後への前奏曲/夜想曲/遊戯

 

そして、カザルス・トリオ(パブロ・カザルス、アルフレッド・コルトー、ジャック・ティボー)による、ベートーヴェンの「大公トリオ」。

ベートーヴェン : 大公トリオ、シューベルト : ピアノ三重奏曲第1番

ベートーヴェン : 大公トリオ、シューベルト : ピアノ三重奏曲第1番

 
コルトーとカザルスとティボーのところでそれぞれ、計3回取り上げられている。もうええっちゅうねん。ちなみに、「海辺のカフカ」に出てきたのがきっかけでわたくしが初めて聴いた、ルービンシュタインハイフェッツ、フォイアマンの「百万ドル・トリオ」のほうは取り上げられていない。実際のところ、百万ドル・トリオで聴いたときはいまひとつピンとこなかったのだが、のちにカザルス・トリオを聴いて、「これけっこう良いかも」と思ったものだ。
つぎは、ヴィルヘルム・ケンプによる、ベートーヴェンピアノソナタ第8番「悲愴」。宇野先生、ケンプのことは散々こき下ろしている。わたくしもケンプはちょっともっさい感じであまり好きになれない。宇野先生の趣味はわたくしとはまったく合わないが、なぜかここだけは話が合う。しかしピアノソナタ第8番、第2楽章に限って言えば、あの朴訥な感じも悪くない。宇野先生もなぜかこの第8番だけは唯一、推薦に値するとおっしゃる。「深沈としたテンポからデリケートなニュアンスがいっぱいにあふれ出たフィナーレ、爽やかさには欠けるものの、じっくりと愛情をこめた第一楽章が秀演」なのだそうだ。あらためてよく読んでみたら、やっぱりあんまり褒めてないな。「バックハウスより良いとはいわないが」とか書いてるし。の趣味はわたくしとはまったく合わないようだが、そこだけは激しく同意する。
ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ第8番 「悲愴」

ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ第8番 「悲愴」

 
それから、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリによる、ドビュッシーの「映像 第1集」。うん、これは良いですね。
ドビュッシー:前奏曲集 第1巻、映像第1集、第2集

ドビュッシー:前奏曲集 第1巻、映像第1集、第2集

グレン・グールドは当然、バッハのゴルトベルク変奏曲、55年と81年と両方が入っている。
バッハ:ゴールドベルク変奏曲(55年モノラル盤)

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(55年モノラル盤)

 
バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)

 
マウリッツィオ・ポリーニについては、三人がよってたかってdisりまくりなのだが、それでも、 ショパンの練習曲は推薦盤として挙がっている。まあ、好みは別として画期的な演奏なんでしょうな。
ショパン:12の練習曲 作品10/作品25

ショパン:12の練習曲 作品10/作品25

 
逆に、三人が全員一致でおすのが、パブロ・カザルスによるバッハの無伴奏チェロ組曲だ。これはたしか村上春樹さんも「無人島に持っていく一枚」に挙げていた(二枚組だけどね)し、わたくしのフェイバリットでもある。長いのでなかなか通しては聴かないけどね。
バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)

バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)

 
あと、ギドン・クレーメルマルタ・アルゲリッチによる、ベートーヴェンのクロイツェルソナタも挙がっていたな。
ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第9&10番

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第9&10番

 
数百枚の推薦盤のうち、持っているのが9枚。多いのか少ないのか、よくわからない。けどとりあえず、この「クラシックCDの名盤」は、読み物としては面白いけど、別段コアなクラシックファンではないわたくしのような人間には、あまりにマッシヴすぎて、CDガイドとしてはあまり役に立たない。ということだけは申し上げておこう。